性犯罪者の元恋人が公判中に「法廷画家」を逆スケッチ、当事者が語る

法廷で法廷画家ジェーン・ローゼンバーグ氏をスケッチし始めたギレーヌ・マックスウェル被告(Photo by Jane Rosenberg/REUTERS/Alamy)



法廷画家を志した理由

マックスウェル被告のほうからローゼンバーグ氏と接触を試みたこともあった。ある時には体の向きを変え、マスクを下ろして「長い1日よね?」と言ってきた。ローゼンバーグ氏も、そうですね、と答えた。「それ以来、ある種の関係を築いています。失いたくないですね」。本人によれば、これがスケッチ作成に大いに役立っているという。「彼女が私に頷く。私も眉毛をあげて、頷き返す。私にとっては最高です。このままずっと続いてほしいですね。私のためにポーズを取ってくれるんですから。最高です」

ローゼンバーグ氏が法廷画家を本職としたのは1970年後期のことだった。ファインアート学校を卒業したばかりだったニューヨークシティの「しがないアーティスト」は、イラストレーター協会で法廷画家の講義を見て、これで食べていこうと考えた。最初はNBCに雇われ、クレイグ・クリミンス裁判でスケッチを描いた。1980年、公演の幕間中にメトロポリタン・オペラのバイオリン奏者ヘレン・ヘインズさんを殺害したいわゆる「メット殺人鬼」だ。それ以来、彼女は刑事司法制度とマスコミ報道の進化を目の当たりにしてきた。1990年代に裁判のTV中継が導入された時には、失業の危機にも瀕した。

「マスコミの報道には、(取り上げる裁判について)様々な傾向があるようです」と彼女は言う。「今はほとんどが#MeToo運動や性的暴行です。バーニー・マドフ絡みの金融裁判が流行った時もありました。9/11以降はISISやテロ関係の裁判が多かった時期で、次から次へとテロリストの裁判が続きました。今はもうあまり報じられていないようですが」 9/11以降は法廷に足を踏み入れることも少々ためらったと本人も認めているが、たいていは法廷内の方が安心できると言う――地球上でもっとも危険な犯罪者とわずか数フィートしか離れていない状況だとしても。

パンデミック中はZoomで被告人をスケッチしなくてはならなかった。今は法廷に戻ったものの、やはり新型コロナウイルスの規制で多少の不便はある。マスクに関していえば、「顔の半分しか見えません。顔全体が見える時と比べると面白みに欠けます。目元に工夫するしかありません」と彼女は言う。「時々(ギレーヌは)マスクを鼻の下に下げたままでいることもあります。よくずり落ちますからね。でも大事なのは、身体の動きや表情をとらえることです」

中立の立場を保たなくてはならないものの、時には法廷で示される凄惨さにローゼンバーグ氏の決意が揺らぐこともある。例えばスーザン・スミス被告が2人の子供を車に閉じ込め、車が川に横転して子供たちが溺れ死ぬをの眺めていた事件の裁判は、ローゼンバーグ氏にとっても辛いものだった。「被告が現場から立ち去る間、子供たちは『ママ、ママ』と叫んでいたそうです。私の子供も同じぐらいの年齢でした」と彼女は当時を振り返る。「あの時泣いたのを覚えています。とてもおぞましかった」。だがたいていの場合、感情が彼女の作品に影響することはない。短時間で締め切りまでに仕上げなくてはならないからだ。「涙がこぼれ落ちると、パステル画は台無しです」と彼女は言う。「私が法廷にいる目的はただ絵を描くこと。裁きを下すためではありません」

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from Rolling Stone US

Translated by Akiko Kato

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