映秀。が角野隼斗ら交えたツアー完走、初ワンマンで見せた涙と最初の集大成

映秀。と角野隼斗(Photo by Yuto Fukada)

あまりにも凄まじいものを見てしまい、しばらく興奮が収まらなかった。才気煥発という表現がここまで似合うライヴも珍しい。(何度でも言うけれど)この音楽が正しく評価されなければ、それは世界のほうが間違っている。

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今年リリースされた二つのアルバム『第壱楽章』と『第弐楽章 -青藍-』で、2021年を象徴するニューカマーとなった映秀。が、自身初の全国ワンマンツアー「This is EISYU」を完走した。YouTubeのカバー動画から台頭し、もともと歌唱力には定評のある彼だが、バンド編成での本格的ライヴは初の試みだったという。さる12月18日、Zepp Haneda(TOKYO)にて開催された東京公演には幅広い年代のファンが駆けつけ、「はじめの一歩」を心待ちにしていた。

開演前の場内にはマック・ミラー、J・ディラ、ハイエイタス・カイヨーテなど、映秀。みずから選んだメロウな楽曲がBGMとして流れていた。やがて会場が暗転すると、アルバムのアートワークにも通じる、時計をモチーフにしたと思しきアニメーションとインストの音楽が流れ出す。針を刻む音、メトロノームのごとく刻まれるリズム。形や大きさの異なる線や図形が少しずつ重なり合い、ひとつの「。」へと近づいていく。映秀。の「。」(マル)は、彼を支える仲間やファンを表すもの。自分だけではなく、ここに集まったみんなで表現を作り上げたい。そんな想いをひしひしと感じた。

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Photo by Yuto Fukada

そこからスポットライトに照らされ、映秀。がカーテン越しに姿を現す。椅子に腰かけ、綴本を手にした文学的な仕草とともに歌い出したのは『第壱楽章』のオープナー「零壱匁」。”僕が何者かは僕自身が決めるんだ”という、幕開けにふさわしい一節が力強く響き渡る。そして、「映秀。」の文字がカーテンに大きく映し出されると、彼は腰を落としたパワースタンスでギターを構え、「反論」のリフを切り裂くようにかき鳴らす。静から動へのダイナミズムで会場を掌握すると、「生命の証明」、「誰より何でしょ 人より事よ」と一気に畳み掛け、自分のペースに引き込んでいった。

「はじめまして」の挨拶を挟んで、快進撃は続く。「第弐ボタン」ではマイク片手にラッパーばりのアクションとリズム感を披露。「失敗は間違いじゃない」では”HANDS UP HANDS UP 掴み取りに行こうよ”という歌詞の煽りに、客席も全力のハンズアップで応えた。ここまで怒涛の展開を見せてきたが、ドラムブレイクからスムースに移行した「砂時計」では、一転してチルな雰囲気を漂わせる。持ち前のジャンルレスな音楽性ゆえ、起伏に富んだセットリストになるのは必然。楽曲とシンクロした映像演出も相まって、観る者を一瞬たりとも飽きさせない。


Photo by Yuto Fukada

その後のMCで、彼は人のきっかけになりたくて音楽活動を始めたこと、自分自身もあるバンドのライヴに勇気づけられたことに触れたあと、「人のきっかけになるというのは重たいことで、人生を変えてしまうわけだし、歌詞も一文字ずつ考えながら書いていて。そうやって作ってきた曲たちをみなさんの前で演奏できることを嬉しく思います。これまではMCイヤだなーとか、歌詞覚えられないなーとかライヴを食わず嫌いしていたけど、みんながライヴを楽しいと話す理由がよくわかりました」と屈託のない笑顔を浮かべた。この発言を踏まえてか、ギター弾き語りの「音ノ葉」では、マイクを外した肉声で”音に音 乗せて歌うよ 明日のあなたが思い出すように”と熱唱。張り詰めた声と弦の音色がフロアいっぱいに響き渡る。

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