三宅純、4年ぶりの新作を解剖 コロナ禍に実現した共演とアルバムタイトル誕生秘話

結果的に『ウィスパード・ガーデン/ Whispered Garden』は、2020年初頭を境に「パンデミック前」の作品が7曲、「パンデミック後」の作品が9曲並ぶ、合計16曲が収録された大作となった。

「ほぼ全曲出揃い、それらを繋ぐアルバム・タイトルをどうしたら良いか悩んでいた時にたまたま思い出したのが、アン・フィリッパ・ピアスによる『Tom’s midnight garden(邦題:トムは真夜中の庭で)』と、フランシス・ホジソン・バーネットによる『The secret garden』(邦題:秘密の花園)』の存在でした」

コロナ以降、時間の進み方が大きく変わり、「人々が社会と関わる方法にも大きな変化が訪れた」と感じていた三宅は、幼い頃に読んだこの2つの小説を思い出し、そこに「時間の流れる速さや順番が、訪れるたびに異なる庭園」というアルバムと共鳴する世界観を見出す。



「その時、「ガーデン」という言葉を囁かれたような気がしたので、アルバムタイトルは『ウィスパード・ガーデン/ Whispered Garden』。このタイトルがついたことで、全てが繋がった気がしました」

本作のレコーディングには、リサ・パピノーやアルチュール・アッシュ、コスミック・ヴォイセズ・フロム・ブルガリアといった、三宅の作品には欠かせないゆかりのミュージシャンはもちろん、エルヴィン・ジョーンズやマイルス・デイヴィスらと共演し今なお第一線で活躍するジャズ・シーンのレジェンド、デイヴ・リーブマンも参加。コロナ禍で身動きが取れなくなった一方、多くのミュージシャンが自宅でのレコーディング環境を整えたことにより、パリをはじめ東京やニューヨーク、リオデジャネイロ、バルセロナ、ロサンゼルス、トロント、ソフィア(ブルガリア)など世界各地とリモートで繋ぎ、コラボレーションすることが可能になったという。

この日のイベントでは、本邦初となるアルバム全曲の試聴はもちろん、デイヴ・リーブマンとの打ち合わせの様子や、「極度のあがり症」だというリサ・パピノーが、この日のために特別に録画したというメッセージ動画、さらには昨年4月7日に新型コロナウイルス感染による合併症で急逝した音楽プロデューサー、ハル・ウィルナーの取材シーンなど、超貴重な映像が次々と披露された。また会場には、本作収録曲「Paradica」にボーカルで参加した勝沼恭子も「観客」として来場しており、ステージ上の三宅と共にレコーディング時のエピソードを和気藹々と話し合うなど、イベントは終始リラックスした雰囲気に包まれていた。

Photo by Masaki Sato

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