三宅純、4年ぶりの新作を解剖 コロナ禍に実現した共演とアルバムタイトル誕生秘話

イベント後半では、『ウィスパード・ガーデン/ Whispered Garden』に使用された絵画がどのようにして選ばれたのか、その経緯について三宅と寺門がエピソードトークを展開。「幻の庭園」を表すような写真や絵画を探していた三宅は、ちょうどその時に寺門から届いた彼の個展のダイレクトメールに「予感めいたものを感じて」個展会場を訪れ、そこに飾られていた1枚の絵画に大いにインスピレーションを受ける。寺門が描く、植物に囲まれた少女(妖精?)の絵はまさに『ウィスパード・ガーデン/ Whispered Garden』を象徴しているかのようだったのだ。



「その日は写真だけ撮って持ち帰った」という三宅。そこから色味の調整、レタッチなどアルバムのイメージに合わせて寺門とやり取りを繰り返したという。イベントでは、その時の画像データなどもスライドで披露。アルバムがパッケージされていく様子をつぶさに知ることができた。

他にも、「Le Rêve de L’eau」は当初デヴィッド・シルヴィアンをイメージして書かれた楽曲で、新天地を求めて放浪中だったシルヴィアンと真摯な往復書簡を繰り返したがリリースに間に合わず、朋友のアルチュール・アッシュに依頼したところ納得のいく仕上がりになった経緯や、「Witness」はクルト・ヴァイルとニノ・ロータを愛したハル・ウィルナーへの追悼を形にした楽曲であることなど、まさにここでしか聞けないような制作裏話が次々と飛び出し、会場内は静かな興奮に包まれていた。

また、イベントの最中には質疑応答が行われ、来年2月末に出版予定だという三宅純をめぐる書籍『MOMENTS / Jun Miyake 三宅純と48人の証言者たち』を発行人が紹介。本書は、三宅本人のロングインタビューとともに、世界各国の著名人が寄せた“三宅愛”を収めた240ページを超える本になるのだという。

こだわり抜いた音響システムを用い、本邦初となる最新作『ウィスパード・ガーデン/ Whispered Garden』の全曲を聴きながら、およそ3時間にわたって作品世界を紐解いていくイベント『Listening & Talk Session』は、作品世界をより多角的に理解する最高の体験となった。




『ウィスパード・ガーデン/ Whispered Garden』
P-VINE 
CD 3,300円(税込) 発売中
LP(2枚組) 6,600円(税込) 2022年5月11日発売

https://www.junmiyake.com/


『MOMENTS / JUN MIYAKE』
三宅純と48人の証言者たち
ロング・インタビューと証言で綴るひとりの音楽家の軌跡
発売日:2022年2月末
ページ数:248ページ
発行:株式会社コラクソー
販売:株式会社トランスビュー
本体:4,400円(税込)

Photo by Masaki Sato

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