『ザ・ビートルズ:Get Back』が永遠に語り継ぐべき名作となった24の理由

Linda McCartney/© 2020 Apple Corps Ltd.

年末年始に『ザ・ビートルズ:Get Back』を堪能したという方も多いのでは。同じくディズニープラスで配信中の『マッカートニー 3,2,1』とともに、ビートルズのファンに贈られた壮大なプレゼント。そのハイライトを一挙紹介。

『ザ・ビートルズ:Get Back』が満を持して公開された感謝祭の週末、世界中のビートルズのファンは歓喜の声を上げた。ピーター・ジャクソンが監督を務め、ディズニープラスで公開された本ドキュメンタリーに、視聴者は驚かされっぱなしに違いない。理解すべき事柄も議論すべきトピックも、当面は尽きないだろう。本作のうちの10分間を無作為に抜き出したとして、初見では特筆すべき発言や音楽面のディティールを網羅することは到底できそうにない。断言しておこう、本作はインパクトがすべての一過性の作品では決してない。『ザ・ビートルズ:Get Back』は発表された瞬間からいつまでも愛され続ける名作だ。

以前、本作のレビューを寄稿した際、筆者はネタバレを回避するように細心の注意を払った。合計8時間に及ぶ本作では、筋金入りのビートルマニアたちの間でも知られていなかった事実(花鉢の中に忍ばされたマイクの存在など)が無数に明かされているため、それは決して容易なことではなかった。だが公開からしばらく経ち、その内容が広く知られるようになった今、ようやく心おきなく本作の内容に触れることができる。本作が『ザ・ビートルズ・アンソロジー』や『ハード・デイズ・ナイト』と肩を並べる不朽の名作である24の根拠を以下で紹介する。



1.
ルーフトップ・コンサートのハイライトと言えば、リンゴの妻だったモーリン・スターキーが「Get Back」に合わせて頭を上下させるシーンだろう。誰よりも熱心なビートルズファンだった彼女はキャヴァーン・クラブ時代からの追っかけであり、その場にいた人々の中で唯一、チケットを買ってコンサート会場の外に並んだことのある人物だった(リンゴと初めて対面した時、彼女は彼にサインを求めた)。彼女はこのライブを、何年もの間心待ちにしていた。ショーの最後に、ポールは彼女の方を向いて「モー、ありがとう」と口にする。胸を打つその瞬間は、今なお健在であるビートルズの本質を物語っていると同時に、彼らの物語が決して色褪せない理由を示している。

2.
ルーフトップ・コンサートの直後、メンバー全員は階下のミキシングルームに移動して腰を落ち着ける。誰もが疲労困憊でありながらも、安堵の表情を見せている。ジョージがため息をつき、「ルーフトップ・コンサートはこれで最後だな」と呟く。モーリンの表情には最高の時間が終わったことに対する悲しみが表れているが、彼女に共感していたのポールだけだった。だがプレイバックを爆音で鳴らすと、ジョージは目を閉じ、恍惚の表情を浮かべる。ジョンは満面の笑みで、「これぞ俺たちの真骨頂だ」と言う。リズムを刻む全員の靴が映し出されるシーンは、言葉にならない感動を呼び起こす。いつの間にか、その部屋にいる全員がモーリン・スターキーとなっていた。すべてのビートルズのファンは、彼女に大きな借りがあると言えるだろう。

3.
「Don’t Let Me Down」のバックコーラスのアイデアについて、メンバーたちの意見は別れる。ジョンとポールは気に入っていたが、ジョージは退屈そうにこう述べた。「はっきり言うと、酷いと思う」。彼の一言で、そのアイデアはボツにされた。その後、ディレクターが提案したクルーズ船上でライブをするという案も、ジョージは一蹴した。「船の上で演奏するなんて馬鹿げてる」。ともすれば傲慢ともとれる彼のリーダーシップは、危機的状態にあったバンドを幾度となく救った。

4.
本作に限らず、あらゆるビートルズ関連の映画において最も耐え難い存在は、1970年公開のドキュメンタリー『レット・イット・ビー』の監督であるマイケル・リンゼイ=ホッグだろう。空気を読むということをまるで知らない彼は、自身のアイデアに4人が呆れていることにさえ気づかない(「児童養護施設はどうだろう? 君らはどう思う?」)。『Get Back』を鑑賞した後では、『レット・イット・ビー』の後味の悪さがマイケル・リンゼイ=ホッグの偏った見方によるものだったことが分かる。彼は自身の苛立ちを作品に反映させ、結果的に駄作を生んでしまった。それもはや、『Get Back』に添えるべき主な注釈事項の1つだ。

Translated by Masaaki Yoshida

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