『ザ・ビートルズ:Get Back』が永遠に語り継ぐべき名作となった24の理由

21.
リンダの娘であるヘザーは、赤ん坊の頃から既にロックスター気質を発揮していた。彼女がマイクに向かって叫ぶと、ジョンはこう言った。「まるでヨーコだ!」。全員がミキシングルームに集まり、「The Long and Winding Road」のプロダクションについて議論する場面で(全員が酔っていたのは明らかだ)、ポールの膝の上に乗ったヘザーが彼の髪を撫でるシーンは見ものだ。

22.
ソロアルバムの制作を考えていたジョージは、「しばらく曲作りに集中させてほしい」と口にする。彼はビートルズのレコード制作に影響を与えないよう、「バンドのレコーディングの時間は確保する」と明言する(ジョンは他のメンバーたちがジョージのレコーディングに参加することを提案した)。それでもやはり、「All Things Must Pass」「Dehra Dun」「Old Brown Shoe」がアルバムに収録されなかったのは不可解だ。残念でならないよね?(Isn’t it a pity?)



23.
ルーフトップ・コンサートで「Dig a Pony」を歌うジョンの表情は喜びに満ちている。この頃の彼は、自分がこういった曲を書けることを忘れてしまっていた。メンバーは別々に屋上の端にそっと近づき、地上の様子を伺う。決してクールな観衆だとは言えないが(街頭でのインタビューは本作で唯一退屈な場面だ)、彼らにとって数年ぶりのオーディエンスであることには変わりない。エキサイトしたジョンは「世界に平和を!」とシャウトする。淡々と演奏しようと努めていたジョージも、つい顔を向けてしまう。それ以上に印象的なのが、満面の笑みをなかなか抑えることができないリンゴの姿だ。

24.
ジョージとジョン、そしてヨーコにバンドを救う気があれば、ビートルズを存続させることができるだろうかとポールが考えるシーン。会話の内容はこれまでもファンの間で広く知られていたが、映像が残されているとは誰も思わなかっただろう。「言っておくよ、この作品はすごくパワフルだ」。ピーター・ジャクソンは昨年、筆者にそう語った。「音声ファイルの存在は知ってたけど、あの会話を交わした時の彼らの表情を映像で観れば、その印象は大きく変わる」。人々はなぜ彼らの音楽の中に絶えず自分の姿を見出すのか、その謎こそが本作の不思議な魅力の核となっている。我々の多くはまだ生まれてもいなかったにもかかわらず、世代や文化の違いを超えて、世界中の人々が彼らの音楽を愛している。ビートルズはなぜ、今もなお我々を魅了するのだろうか? 「彼らがアイコンたる理由はただひとつ、その音楽が圧倒的に優れているからだ」。ジャクソンはそう語った。「彼らが歌う曲には喜びが宿っている。どれだけ年月が経とうとも、その輝きが色あせることは決してなく、誰も奪うことはできない。聴き手を自然と笑顔にするあの抗いがたい喜びは、多くの人々にとって人生の一部になっているんだ」。本作『Get Back』は、その喜びで満ち溢れている。

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From Rolling Stone US.




©2021 Disney ©2020 Apple Corps Ltd.

ドキュメンタリー作品『ザ・ビートルズ:Get Back』
■監督:ピーター・ジャクソン
■出演:ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スター
ディズニープラスにて全3話独占配信中
Part 1: DAY1〜7(157分)/ Part 2:DAY816(174分)/ Part 3:DAY1722(139分) トータル:約7時間50分
公式サイト:https://disneyplus.disney.co.jp/program/thebeatles.html


ドキュメンタリー・シリーズ『マッカートニー 3,2,1』
ディズニープラスにて全6話独占配信中
出演・製作総指揮:ポール・マッカートニー、リック・ルービン
監督:ザッカリー・ハインザーリング(『キューティー&ボクサー』)
©2021 MPL Communications, Inc.
公式サイト:https://www.disneyplus.com/ja-jp/series/mccartney-3-2-1/7R6sKzCe6axn

Translated by Masaaki Yoshida

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