ボノボが明かす、曲作りのプロセス「ダンスフロアの反応ほど貴重なフィードバックはない」

ボノボ(Photo by Grant Spanier)

2017年の前作『Migration』が全英チャートのトップ5入り、米ビルボードのダンス・アルバム・チャートでは1位を記録。いまや世界的プロデューサー/DJとなったボノボ(Bonobo)ことサイモン・グリーンにインタビュー。ジャミーラ・ウッズ、ジョージ、ジョーダン・ラカイなども参加した最新作『Fragments』(1月14日リリース)を大いに語る。

現役のDJを続けるエレクトロニック・プロデューサーも少なくないが、ボノボもその一人だ。彼はよく、制作途中の作品をクラブへ持ち込んで試運転させることがある。スタジオとクラブをいわば「フィードバックループ」として利用することで、作品のエッジに磨きをかけながらムラを排除して、彼特有の穏やかながらダンサブルな楽曲に仕上げていくのだ。「平日に作った曲を、週末にクラブで流してみるのが、いつものやり方さ」とボノボは言う。結果として「ダンスフロアで曲が全く乗らない瞬間が実感できる。これほど貴重なフィードバックはない」という。

熱狂的なディスコループに迫力のあるキックドラムを加えて流せばクラブ全体が盛り上がるだろう、などと安易に考えがちだが、実際は違う。「自分でも思いもしなかった曲に対して、大きなリアクションを受けることも多い」とボノボは続ける。「“来たぞ、これこそがクラブ受けする曲だ!”と自分で思った作品ほど失敗する」という。逆に「さほど自分でも期待していなかったパートで、ものすごく盛り上がったりする」とボノボは語る。




ただし今は、「明らかに大して力を入れていなかった部分を大化けさせる奇跡」を生み出せた環境から、かなり長い時間遠ざかっている。ボノボは過去18カ月間のほとんどを、コツコツとニューアルバム『Fragments』の制作に費やしてきた。彼のいつもの曲作りのプロセスがひっくり返されてしまったのだ。全てのクラブが休業中だったため、ダンスフロアからリアルタイムのリアクションを得ながら自分の楽曲を評価するという、いつものやり方で進められなかった。「去年はクラブでの試運転ができなかったから、まるで暗闇の中にいるようだった」という。「“これ以上は自分で確かめようがないから、どうかうまく行ってくれ”と願うだけだった」

しかしボノボは、何も気を揉む必要はない。まもなくリリースされる『Fragments』は彼自身の最近の作品と同様に、静かな滑り出しから優雅に盛り上げて行くいつものスタイルだ。彼は、曲の最も盛り上がるクランチーなパートですら静かなサウンドを貫きながら、ビッグルームのファンを魅了してきた。まるで、池の水面を派手に波立たせることなく静かに水を切りながら跳ねて行く小石のように。ダンスミュージックといえば激しく波打つイメージだが、ボノボの場合は例えるならシュッとしたさざ波のようだ(唯一の例外は、トータリー・イノーマス・エクスティンクト・ダイナソーズとのコラボで2020年にリリースした「Heartbreak」だろう。ノリの良いブレイクビーツに快活なディスコ・ヴォーカルが絡み合う楽曲で、正に「クラブカルチャーの歴史的瞬間へのオマージュ」だった)

Translated by Smokva Tokyo

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