吉田豪が選ぶ2021年の年間ベストソング

6. 里咲りさ「君は微炭酸」

ホリエモンやキングコング西野さんの本を愛読したり、家にあったそこらのレジ袋を高額販売したりの怪しい方向性(本人曰く、あれは価格も決めていない投げ銭システムだったから物販で売ったわけではないとのこと。無理あるよ!)が悪目立ちしすぎて、ちゃんといい曲を作れるし、歌声もすごくいいってことが全然伝わってこない里咲りさ。あまり話題になっていないニューシングルもやっぱり素晴らしかったのに、歌を聞かせた米に新曲のダウンロードコードを付けて販売している(米1合or10合、生写真、ダウンロードコードで2500円)ことばかりが話題になってるんですよね。これも本人曰く、SDGs的な意味で、同じCDを大量に買った人が持て余すよりも、米なら全部食べられて地球に優しい的な意味があるらしいんですけど。ちなみに、そのシングル収録の「君は微炭酸」にタイアップを付けようとしていろんな飲料メーカーに営業をかけて、唯一手応えがあったメーカーが強炭酸のドリンクしか出してなくて困ったりとか、そういうところもいちいち里咲りさでした。もちろんボクは「CM用に強炭酸ヴァージョンの歌詞も作れば問題なし」とアドバイス。



7. エレクトリックリボン「fallin’rollin’love」

ここ最近のアイドル界ではトップクラスでギラギラ&ガツガツしている室井ゆう。Perfume黎明期から活動しているエレクトリックリボンに加入するなり、自主運営に移行するとリーダーになって老舗グループを乗っ取り、音楽性も自分の好みにシフトさせつつ、フェスを主催すれば自分の好きな芸人やバンドも呼び、さらに自分の好みを丸出しにしたグデイというグループも結成(5曲入りCDを5枚同時発売した特殊なアルバムも良かった)。そっちのグループでも好きなバンドに楽曲を頼み、ジャケやMVに岡野陽一を起用したりと好き放題をやってるんですよ。なので、この曲もONIGAWARAによる完璧なポップソングなんですが、MVにはトンツカタン・森本晋太郎を起用する職権乱用ぶりを発揮してます。



8. ルアン「夢のParisまで連れてって」

ピチカートファイブとスパンクハッピーとアーバンギャルドの流れを受け継ぐ2人組男女ユニット・電影と少年CQ。ソロ活動もすごいことになっているゆっきゅん同様、ルアンちゃんのソロもいまのところ外れなしなんですよね。特にこの曲はいわゆるナイアガラサウンドで、サビ部分には80年代の資生堂やコーセーのCMソングっぽさもあったりして(ポータブル・ロックの「春して、恋して、見つめて、キスして」的な)、是非とも幅広い層に届いて欲しいのにサブスクにもなければMVもないという……。せめてライブ動画ぐらいは公開して欲しい!



9. 眉村ちあき「Individual」

最近はわかりやすく世間に届きそうなタイアップを取れる曲を作る努力をしていたけれど、いまでも異常な構成のどうかした曲はちゃんと作れると証明した曲。やっぱり、こういう曲をライブでやって楽しそうにしている眉村さんを観ているのがこっちも楽しいんだよなーと、やついフェスでこの曲をやる前にステージに上げられた人間としても思いました。いや、やっぱり天才ですよ。そして、こういう曲こそ公式で楽しそうなライブ動画をアップすればいいのに!



10. 木下百花「えっちなこと」

NMB48卒業後はガールズバンドを組んだり、ソロ活動を始めても百花名義になったりkinoshita名義になったりと迷いが見えた木下百花。それが、本名に戻った宮野弦士編曲の「ダンスナンバー」ぐらいから音楽的にも明らかに突き抜けたというか、優れた編曲家と組むことで自分の作曲&編曲スキルも上がったと思うんですよね。そして、奥田健介編曲のこの曲では、あえて首のタトゥーを丸見えにしながらアイドル時代から反発し続けてきた可愛い格好をした上で、昔から公言している「性的な行為が気持ち悪くて苦手」というデリケートなことを歌詞にして、それをポップに聴かせるというねじれた行為をパーフェクトにやりきっててすごいです。


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