音楽における無音の効果的テクニック、シルク・ソニックなどの名曲から鳥居真道が徹底考察







ブレイクによるストップ・アンド・ゴー形式はロックンロール黎明期のヒット曲にも多くみられます。エルヴィス・プレスリーの「Hound Dog」はその筆頭格です。次のヴァースへと移行する際にブレイクが用いられています。「ハートブレイクホテル」もボーカルを残したブレイクが印象的です。この手法は、ビル・ヘイリー・アンド・ヒズ・コメッツの「Rock Around the Clock」、カール・パーキンスの「Blue Suede Shoes」、リトル・リチャードの「Tutti Frutti」、エディ・コクランの「Summer Time」などでも使われています。





ブレイクは無音の緊張感を利用したテクニックだと述べてきました。緊張感に満ちた音楽のなかで用いられればその緊張感はさらに増します。その代表例はCANの「Mushroom」とThis Heatの「Horizontal Hold」です。前者はブレイクの後に演奏されるドラマー、ヤキ・リーベツァイトによるタムを使ったシンプルなフィルがとても印象的です。後者はブレイクが効果的に使われた曲のうち、最もクールなものの一つといって良いでしょう。まさに金字塔です。



きりがないのでそろそろやめますが最後にひとつ。かつてリチャード・ヘル&ヴォイドイズを聴いたことがないという友人に、代表曲の「Blank Generation」を聴かせたことがありました。彼が「歌詞に合わせて無音になってるね」と指摘したときには目から鱗が落ちました。歌詞とアレンジの関連性を意識することなく音楽を聴いてこなかったので、なかなか衝撃的な指摘でした。


鳥居真道



1987年生まれ。「トリプルファイヤー」のギタリストで、バンドの多くの楽曲で作曲を手がける。バンドでの活動に加え、他アーティストのレコーディングやライブへの参加および楽曲提供、リミックス、選曲/DJ、音楽メディアへの寄稿、トークイベントへの出演も。
Twitter : 
@mushitoka / @TRIPLE_FIRE

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Rolling Stone Japan 編集部

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