米富豪「仮釈放なしの終身刑」判決後、わずか数カ月で死亡

ロバート・ダースト被告(Photo by AFP via Getty Images)

米ニューヨークの著名な不動産王の息子、ロバート・ダーストが78歳で死亡した。20年以上前に親友のスーザン・バーマンさんを殺害した罪で、仮釈放なしの終身刑を言い渡されてから3カ月弱で亡くなった。

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2021年10月14日の量刑判決の後(その1カ月前に、陪審は第一級殺人罪で有罪評決を言い渡した)、ダーストは新型コロナウイルス陽性と判定され、病院に搬送されて人工呼吸器につながれた。結果として他の病状も悪化し、現地時間10日に心停止を起こして死亡した。

「ダースト氏は本日未明、カリフォルニア州の矯正施設に収容中に亡くなりました」。ダーストの裁判で弁護人を務めたチップ・ルイス氏はニューヨーク・タイムズ紙に語った。「死因は、この数年我々が裁判所に再三報告してきたいくつもの疾患に伴う自然死だったと理解しています」。ダーストの主任弁護士、ディック・デゲリン氏は「彼は膀胱癌を含む多くの健康上の問題を抱えていた。この10年間、拷問同然の仕打ちを受けていた。刑務所にいて、病気で、彼が裁判を生き残れるとは思えなかった。あの状態で裁判にかけるべきじゃなかった」と語る。

不動産帝国The Durst Organizationの後を継いだシーモア・ダーストと、社交界の花形バーニス・ハースタインの間に生まれた4人兄弟の長男のダーストは、生涯にわたり複数の殺人と謎の失踪への関与が疑われていたが、おそらく財力のおかげで正義の手を逃れてきた。

1982年に姿を消した元妻キャシー・マコーマック・ダーストさん(当時29歳)の失踪事件で、ダーストはずっと容疑者として名前が挙がっていた。配偶者放棄を理由にダーストが離婚届を出してから27年後の2017年、キャシーさんは法的に死亡が宣告された。

2010年にはキャシーさんの失踪を下敷きにした映画『幸せの行方』が制作され、ダーストと思しき人物をライアン・ゴスリングが演じた。のちにアンドリュー・ジャレッキー監督は『幸せの行方』が気に入ったダーストから打診を受け、その結果ダースト本人も制作に加わった2015年のドキュメンタリーシリーズ『The Jinx』が生まれた。

全6話のシリーズでは、トラブル続きのダーストの人生やキャシーさんの失踪事件、2000年に親友のスーザン・バーマンさんが射殺された事件、そして2001年に隣人のモリス・ブラックさんがバラバラ死体で発見された事件で、彼が果たしたと思しき役回りにメスを入れた。

殺人罪の裁判で検察も主張したように、バーマンさん(ビバリーヒルズの自宅で処刑スタイルで射殺されていた)はキャシーさんの失踪から数十年間、ダーストの「公的アリバイ」の証人を務めていた。だが未解決事件捜査班がキャシーさん事件の再調査に乗り出すや、ダーストは口封じのためにバーマンさんを殺害した、と検察は主張した。

Translated by Akiko Kato

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