BREIMENワンマン完遂、真の表現者たちが追究する「自由」の意味

BREIMEN(Photo by renzo masuda)

1月15日、東京・恵比寿LIQUIDROOMにて、BREIMENがワンマンライブ「ANTAGATADOKOSA」を開催した。配信映像のアーカイブは1月21日23時59分まで視聴可能。

【写真】 BREIMEN ONEMAN LIVE「ANTAGATADOKOSA」

本公演はリリースに伴うツアーではない単発公演であり、BREIMENの「これまで」を総括しながら「これから」も見せる内容だった。そしてそんな内容が証明したのは、BREIMENは非常に優れた表現者集団であるということ。各メンバーがChara、TENDRE、Tempalay、eill、Nulbarich、Kan Sano、Mega Shinnosukeなど様々なアーティストのプレイヤーとして活躍していることで、BREIMENは「業界最前線プレイヤー集団」と言われる場面が多く、それも紛れもない事実であるが、世の中や人間に対する思想とリアルな生き様を作品に昇華させることのできる感性とスキルを持っている、真の表現者たちであるということがはっきりとわかるライブだった。


Photo by renzo masuda

昨年5月にリリースされた2ndアルバム『Play time isn’t over』は、個人的に2021年ベストアルバムの上位に入ってくるほど素晴らしい作品だった。2021年は「少し耐え忍べばまた元の日常に戻るだろう」という希望が打ち砕かれてコロナ禍が続き、未来は予期できないことをさらに突き付けられ続けた1年であった。しかも、「多様性と調和」という言葉が掲げられるもののそれは机上の空論で、日々現実社会では自分を守ることで精一杯な言い争いやぶつかり合いが、小さなものから大きなものまで巻き起こり続けていた。そんな世の中に対して、新たな生き方の指針を示してくれたのが『Play time isn’t over』というアルバムである。



身の回りの遊びから戦争のはじまりまで、今こそあらゆることに敏感になって「気づく」ことが大切であるということ。人それぞれ違う正義を抱えているのは当然で、そのどれをも否定する必要はなく、また同じ正義を持つ必要もなく、「対話」をすれば思想が違う者同士でも同じ人間として少しは愛を持てるはずだということ。たとえばコロナ、もしくは権力者たちから、何かを奪われてしまったとしても、自分たちの遊びを続けていくことはできるということ。――こうやって文字で書くと綺麗事のように胡散臭く、かつ説教臭くなってしまうが、それを押し付けがましくなく表現し、グルーヴに揺らされる中でハッと見方を変えさせてくれるのがBREIMENの音楽だ。

また、ルーツがばらばらな5人が集まって、1曲の中にもR&Bやファンク、ジャズ、ゴスペル、ハードロックなど様々な要素を混ぜ込んでいるサウンドは非常にエクスペリメンタルで新しいものを生み出しており、なおかつそれは、さきほど述べた彼らなりの「多様性と調和」「異なるものの共生」への提示や、遊びに対して真摯である思想がサウンドでも表現されていると言える。星野源、米津玄師、Official髭男dism、King Gnuなどのトップアーティストたちが今、多様なリズムとあらゆるジャンルの要素を混ぜ込んだ曲をヒットさせることで「ポップスの複雑化」が進んでいる今の国内音楽シーンの一部の流れを、さらに面白くしてくれる存在になり得るという期待を個人的には持っている。

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