YAJICO GIRLが語る、「どこか懐かしい響き」の正体

YAJICO GIRL(Photo by domu)

大阪出身の5人組バンド、YAJICO GIRLによる5曲入りEP『Retrospective EP』が完成した。

昨年2月にリリースされた2ndアルバム『アウトドア』では、プロデューサーにMUSIC FOR MUSICのTejeを起用。ロックバンドのフォーマットを基軸としつつ、それにとらわれないサウンドスケープを展開していた彼らだが、今回も引き続きTejeとタッグを組んで、ダンスミュージックやハイパーポップ、ゴスペルなど様々なジャンルをクロスオーバーさせながら、これまで以上に実験的な作品を作り上げた。

かねてよりフランク・オーシャンやケンドリック・ラマー、チャンス・ザ・ラッパーなどに傾倒しながらYAJICO GIRLの可能性や定義を押し広げてきたヴォーカルの四方颯人。故郷の大阪を離れ、コロナ禍で「回顧」や「ノスタルジー」をテーマに歌詞を書いたという彼の目には今、どのような景色が映っているのだろう。

─新作『Retrospective EP』はいつ頃から作り始めたのですか?

四方:前作となる2ndアルバム『アウトドア』を2021年2月にリリースして、その直後くらいからデモを作り始めました。レコーディングは5月、6月くらいだったかな。当初はアルバムやEPのようなまとまった形で出すのではなく、1曲ずつシングルを出していけたらいいなと。そのうち形になりそうな曲が5曲くらいになって、それらを仕上げていくうちに「EPで出そう」という話に落ち着きました。

─前作に引き続き、Tejeさんがプロデューサーとして参加しています。彼との出会いは、YAJICO GIRLにとって大きな転機になったのではないでしょうか。

四方:そう思います。彼と出会う前、バンドのメンバーだけで作ったアルバム『インドア』では、「海外のあのバンドのサウンドに近づけたい」と思いつつも、やり方が分からず自分たちが持っている機材を駆使して無理やり再現しようとして、それが期せずしてYAJICO独自のサウンドになっていたと思うんですけど、Tejeさんと一緒に作った『アウトドア』以降は彼が持っているたくさんの引き出しを使うことによって、自分たちが思い描いていた通りのサウンドに近づくことが出来るようになった。そこは大きく進化した部分なのかなと思っています。

─Tejeさんとのやり取りは、基本的にはリモートで行っていたのですか?

四方:『アウトドア』のときは、コロナ禍でもあったしほぼリモートでやり取りをしていたのですが、今作を作っている時はちょうどコロナもひと段落していたし、僕らとTejeさんの相性も良いことがわかったので、実際に会ってやり取りすることが多くなりました。これまでは割と自分たちの中で「制限」を設けていたところがあったけど、Tejeさんと「次はもっと(YAJICOの)音楽性を広げたいよね」という話をしていたのもあり、楽しみながらも様々な実験を試みた作品に仕上がりました。

─これまでで「制限」をかけていたのはどうしてだったのでしょう。

四方:今はパソコンに音楽ソフトがバンドルされているし、フリーの音源だっていくらでもあるから、やろうと思えばどんな音楽でもある程度は作れるじゃないですか。その中で「僕ららしさ」みたいなものをちゃんと確立するには、ある程度自分たちで制限をかけないと難しいと思ったんです。それに僕自身、アルバム全体を貫くテーマやコンセプトがあるものが好きなので、「こういうアルバムを作りたい」と決めた時点で、それにそぐわない楽曲はセレクトから外していたんです。でもEPの場合はそういうテーマやコンセプトもなかったから、1曲ごとにやりたいことをやろうという発想になったのだと思いますね。

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