YAJICO GIRLが語る、「どこか懐かしい響き」の正体

フランク・オーシャンやラナ・デル・レイなどを聴いていると、ノスタルジックな感情が湧いてくる

─過去にあるものからインスパイアされて、新しいものが生み出されることはよくありますからね。

四方:それに、そもそも僕はノスタルジックなものが好きなのだと思います。例えばフランク・オーシャンやラナ・デル・レイなどを聴いていると、うわーっとノスタルジックな感情が湧いてくるんですよ。彼女たちが醸し出すノスタルジーは、僕が生まれる前のことだったりするのですが、おそらくDNAレベルで刻み込まれている、誰もが感じる「懐かしさ」というものがある気がします。

世代的にノスタルジックなものというと、例えば『木更津キャッツアイ』や『池袋ウエストゲートパーク」などクドカン(宮藤官九郎)が作った2000年代のドラマになりますね。ニンテンドーゲームキューブやゲームボーイアドバンスといったゲームにもノスタルジーを感じます。

─「どことなく君は誰かに似ている」の後半の歌詞、“町の音 アニメ 駄菓子屋 鬼ごっこ 明日の予報は雨”や、“音楽 スマブラ 漫画 バスケットで時間は過ぎたね”の部分に、四方さんが幼少期に見たと思しきそういう光景が反映されていますよね。

四方:そうですね。特に誇れるものは何もないけど(笑)、きっとそういう光景を見て育ってきたからこそ、今の自分がある。



─それってやっぱり、上京して地元を客観的に振り返る視点を持ったからこそ、生まれた感情だと思いますか?

四方:もう、間違いなくそうですね。今まで大阪には全く愛着がなかったんですけど、こっちに出てきてすごく好きになりました。たこ焼き屋がそこら中にある光景とか(笑)、ずっと当たり前だと思ってきたけど、そんなことないんだなって。飲み屋で知り合ったおっちゃんとすぐ仲良くなる感じとか、関西弁の響きとか、時おりすごく恋しくなります。

─ただ「VIDEO BOY」の歌詞は、「ノスタルジー」というよりここ最近のSNSの炎上騒動などについて歌っているように感じました。

四方:SNSって、自分の意見とかが可視化されるじゃないですか。考え方はそれぞれ違うのに、その差異が常に見える状態なのは疲れますよね(笑)。そういう、日々の暮らしの中で「しんどいな」と思うことを書き連ねつつ、それこそ幼少期に見ていたアニメや映画を思い出して、その頃に憧れていたものと今の自分とのギャップについて書いてみました。

ちなみにこの曲だけ、デモ段階からメンバーとTejeさんとコライトっぽい感じで作ったんですよ。スタジオに入って音楽を流しながら、その場でメロディを考えたり、その中から良いテイクをつなげていったりというやり方を初めてやってみたんです。そうすると、「ここ(のメロディ)は、もうちょっと動いた方がいいんじゃない?」とか、自分以外の意見が入ってくる。それがとても新鮮で楽しかったですね。

─本作を作り終えて、今はどんな手応えを感じていますか?

四方:さっきも言ったように、自分はノスタルジックなものが好きなのだなと改めて思いました。作家って、いろんなシグネイチャーがあると思うけど、僕自身はちょっと回顧的な表現が一つの「核」になるのかなと。思えば2016年にリリースした『いえろう』の頃から、いろんな人に「どこか懐かしい響きがある」と言われていたそれに今回気づけたことは、表現者としてとても有意義だったなと感じています。



<INFORMATION>


『Retrospective EP』
YAJICO GIRL
MASH
発売中

※配信リンク
https://FRIENDSHIP.lnk.to/RetrospectiveEP

YAJICOLABO 2022 “OSAKA / TOKYO”
2022年1月30日(日)大阪・梅田QUATTRO - YAJICO GIRL / BBHF
2022年2月5日(土)東京・渋谷QUATTRO - YAJICO GIRL / YONA YONA WEEKENDERS
open 17:15 / start 18:00
https://www.yajicogirl.com

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