西岡恭蔵と細野晴臣の関係性、ノンフィクション作家・中部博とたどる

Yoh-Sollo / 西岡恭蔵

田家:この曲を選んだのは?

中部:「ろっかばいまいべいびい」まで2枚のアルバムを細野さんがプロデュース、共同制作で関わっているんですけど数年してからまた細野さんにアレンジをいっぱい頼んでいるうちの1曲なんです。

田家:『ろっかばいまいべいびい』から4年後のアルバムですもんね。

中部:そう。この『Yoh-Sollo』はほとんど細野さんがアレンジした曲が多いんですけど、1979年ですから細野さんはYMOでワッと人気が出てくるので、よく忙しい最中に恭蔵さんの頼みを飲んだなってちょっと思いました。それぐらい恭蔵さんも真剣に頼んだし、細野さんも断らない人なんですね、きっとね。ちょうどデジタルミュージックを始めた頃で、でもいわゆるテクノの音にはなっていなくて、いい具合でデジタルミュージックが入って、恭蔵さんの音楽の世界が広がった感じがして。このアルバムも、もしかすると細野さんは気に入っているかもしれないですね。

田家:細野さんの「泰安洋行」とか、「トロピカル・ダンディー」の頃の匂いもありながら。アルバムは9曲入っているのですが、細野さんが6曲アレンジしている。YMOは1979年に『イエロー・マジック・オーケストラ』。全米で5月に発売して、9月にもう1枚日本版の『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』が出る年ですから、その合間ですもんね。忙しいですよね。

中部:忙しいと思いますけど、恭蔵さんから言われると、ついやっちゃうんでしょうね。

田家:『ろっかばいまいべいびい』から4年経っているわけですが、恭蔵さんは1976年に『南米旅行』、1977年に『’77.9.9京都「磔磔」』ライブアルバムがあったりして、音楽の作り方が激変している。

中部:それは音楽そのものは細野さんの影響が相当大きいのと、音楽をどういうふうに作っていくか、恭蔵さんが悩んでいるところもあるんですよね。海外に旅行するとか、ライブをやることで打ち破っていこうという姿勢があったんだと思うんですけど、そのうちの1つとして、もう一度細野さんにやってもらいたいというのがあったんだと思うんですね、『Yoh-Soll』はね。

田家:『Yoh-Sollo』の曲は海外を旅行しながらスペイン、地中海、モロッコ、バリ島。1978年12月18日から1979年1月30日までの旅。旅日記も中部さんが読まれていて、紹介されているので旅の本としてもおもしろく読めます。「Yoh-Sollo」はマドリード滞在中に書かれている。

中部:刺激を受けるというのと、鼻歌まじりに音楽を作れちゃう人なんですね。恭蔵さんって1日何曲も作っちゃう人ですから、楽器がなくてもどんどん楽譜で採譜していっちゃうタイプなので。相当作曲家として力量があったと思うんです。

田家:スペイン、地中海、バリ島で書いてきた曲はどうしても細野さんにアレンジしてもらいたいというアルバムだったんでしょうね。もう1曲お聞きいただきます。アルバム『Yoh-Sollo』の中の「Moroc」。

Rolling Stone Japan 編集部

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