無差別殺人・傷害事件から考えるメンタルヘルスの問題

また以前この連載の「評価や成果に捉われない 改めて考えるべき“より深い”自己肯定感とは?」で詳しく取り上げましたが、何かの役に立ったとか、何らかの成果を得たという「自己効力感」や「自己有用感」に基づいた、いわば機能レベルでの自己肯定感ばかりが強調されると、何かができなければ存在が否定されてしまうということにもつながります。自分の存在を否定されることはまさに「破滅的な喪失」と言えるでしょう。本来の自己肯定感は「自分が自分であって大丈夫」といった、存在レベルのものであるべきです。誰かがその人として存在することに、何かクリアしなければならない条件など何一つないのです。

社会のあり方は人のメンタルに大きな影響を与えます。どのような社会が皆にとって生きやすい社会なのかを考えることが、悲劇的な事件の発生を未然に防ぐためにも必要なことなのだと思います。

参照
『拡大自殺 大量殺人・自爆テロ・無理心中』(片田珠美著・角川選書)



<書籍情報>



手島将彦
『なぜアーティストは壊れやすいのか? 音楽業界から学ぶカウンセリング入門』

発売元:SW
発売日:2019年9月20日(金)
224ページ ソフトカバー並製
本体定価:1500円(税抜)
https://www.amazon.co.jp/dp/4909877029

本田秀夫(精神科医)コメント
個性的であることが評価される一方で、産業として成立することも求められるアーティストたち。すぐれた作品を出す一方で、私生活ではさまざまな苦悩を経験する人も多い。この本は、個性を生かしながら生活上の問題の解決をはかるためのカウンセリングについて書かれている。アーティスト/音楽学校教師/産業カウンセラーの顔をもつ手島将彦氏による、説得力のある論考である。

手島将彦
ミュージシャンとしてデビュー後、音楽系専門学校で新人開発を担当。2000年代には年間100本以上のライブを観て、自らマンスリー・ライヴ・イベントを主催し、数々のアーティストを育成・輩出する。また、2016年には『なぜアーティストは生きづらいのか~個性的すぎる才能の活かし方』(リットーミュージック)を精神科医の本田秀夫氏と共著で出版。Amazonの音楽一般分野で1位を獲得するなど、大きな反響を得る。保育士資格保持者であり、産業カウンセラーでもある。

Official HP:https://teshimamasahiko.com/

Rolling Stone Japan 編集部

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