米でCD売上が17年ぶりに増加、CDの長所を考えてみた

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コンパクトディスク(CD)にはアナログ盤のようなロマンもMP3のような利便性もないが、今でも音楽に没頭するには理想的なフォーマットらしい。

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2021年、アメリカでCDの売上が17年ぶりに増加した。これはアデルによるところが大きい。彼女のニューアルバムは89万8000枚のCDセールスを記録。最後にCDがこれほど売れたのは、アッシャーやアシュリー・シンプソン、フーバスタンクが活躍していた時代だった。現在の稼ぎ頭はアデル、BTS、テイラー・スウィフト。アナログ盤のブームが象徴するように、全体的に物理的メディアが復活しているというのもある。かつて「完璧なサウンドを永遠に聴ける」ことを保証したガジェットに、音楽ファンが再び傾倒しているのはなぜだろう?

CDはロマンとは一切無縁だった――すべては機能。アナログ盤ほど色気はないし、クールでもなければ、感覚に訴えるわけでもなく、セクシーでも魅惑的でもなかった。傷やひびに聴き手の人生が刻み込まれた古い傷だらけのアナログ盤を愛でるのとは違い、必ずしもCDに思い入れを感じることはなかった。手持ちの『スパイス・ワールド』や『ライフ・アフター・デス』のCDの音は、他の誰かのCDと変わらなかった。

だがCDは便利だ。とにかくそれに尽きる。ディスクを入れて、再生ボタンを押すと、音楽が響きわたる。効率的にグルーヴを届けてくれるので、かつてないほどの人気を博した。20分ごとに裏面にひっくり返さずとも、かっこいい音楽を1時間じっくり聞きたいと思ったら、CDはまさにうってつけだ。これまでよりも大音響で、音楽に没頭する空間を与えてくれる。

80年代にCDが登場すると、専門家たちは不満を並べた(あまりにも味気ない! 人間味に欠ける!)。だがファンは、70分強の音楽を一つに凝縮したディスクを愛した。アナログ盤と比べて手間やトラブルが少ないのも、レコード針やトーンアームの共振に煩わされたくないライトリスナーには大きな利点だった。プレイヤーをプログラムして、不要な曲を飛ばすこともできた(ヴァン・モリソンの『アストラル・ウィークス』は、「ヤング・ラヴァーズ・ドゥー」がないほうがずっといい。あくまでも私見)。スキットを飛ばして、ヒップホップのお気に入りの曲だけを爆音で鳴らすこともできたし、どんなアルバムもカスタマイズして自分だけのオリジナルバージョンを作ることもできた。例えばビートルズの『リボルバー』。9-13-7-4-14-5-3-12-10-1-8-2-11-6の順にプログラムして、再び9曲目と14曲目をリピートする。まったく違う体験になること請け合いだ。

Translated by Akiko Kato

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