KOZZY IWAKAWAが2枚組37曲のカバーで新世代に伝える、“音楽世界旅行”の楽しみ方

―今作は、そうしたご自身のルーツを辿る楽曲をまとめたものですよね。もともとはどんなきっかけでレコーディングしていたんですか。

ソロ、マックショウ、コルツのレコーディングをするときに、機材テストで録音していた音源が多いんです。テープマシンの音のチェックとかで録っているから、ちゃんと本気で演奏はしていて、クオリティが高いものもあるんですよ。ただ、ベースが入っていなかったりとか、作品として作っていないものが大半なので、そういう音源に手を加えたものと、アルバムのために録ったものを混ぜて、全部1人で演奏している曲だけを入れています。

―当たり前のように聴いていたんですけど、全部1人で演奏して歌っているというところが、すごいですよね。「えっ?これ1人でやってるの!?」って。ドラムもこんなに上手いんだって改めて思いました。

僕が楽器の中で一番好きなのが、ドラムなんです。一番最初に目指したのはドラマーなんですよ。自分の叔父さんとか兄貴とか従兄弟とかも楽器をやっていたんですけど、みんなギターやベースを弾いてバンドを組んだりしていたので、ドラムだったら空いてるなと思って(笑)。それで家にあったドラムセットで練習していて、最初にトミー君(マックショウのベーシスト、トミー・マック)とかとバンドを組んだときには、ドラマーとして入ったんです。今回もドラムを叩きたいからやってる曲がいっぱいあるんですよ(笑)。

―選曲を見ると、DISC 1はよりルーツ的な曲、DISC 2はそこから発展した曲が多いですね。

1枚目にわりと古い曲を固めて、2枚目には古くもありルーツを持った新しい曲を入れました。僕の中で新しいというと80年代だから、世の中的にはまったく新しくないんだけど(笑)。僕はビートルズを起点に、遡ってエルヴィス・プレスリー、チャック・ベリーとか50年代、60年代の音楽を聴いてきたんですけど、その辺を好きになると、もっと古い戦前のブルースとかも聴いてみたくなるんです。普通は聴こうと思っても地元にレコードが売っていなくて聴けないんだけど、うちの兄貴が同じような道を辿っていて、エリック・クラプトンが好きで古いブルースを聴いてみたいって、地元の広島から汽車に乗って大阪まで輸入盤を買いに行ったりしていたんです。それも1つの旅というか。どんな家族なんだっていう話ですけど(笑)、何もないところで育ったおかげで、音楽でちょっとした旅をするようになっちゃったんでしょうね。兄貴は岡山にクラプトンの来日公演を観に行って、駅でクラプトン本人に遭遇してそのままついて行っちゃいましたから(笑)

―文字通りの旅になってますね(笑)。

それに、広島にはレッド・ツェッペリンとか、アーティストによってはチャリティーコンサートで来日して平和公園の横の公会堂でライブが開かれたり、「ビートルズシネクラブ」というファンクラブの催しを無料で観ることができて、音楽に触れる機会がすごく多かったんですよね。そういうことをこの10年ぐらいで思い返しながら、「自分の骨とか血になった音楽ってなんだろう」って考えたりしていたんです。だいたい、年明けには仕事始めに録音機材とか楽器のメンテナンスのためにチェックで録音することが多いので、そのときにマイクのチェックがてらアコギでブルースを録ってみたりとか。そういうことをこの10年ぐらい続けてきた結果が、今回のアルバムに繋がってます。そういえば、小さい頃に兄貴が家で聴いていたデルタブルースとかがすごく怖くてね。

―確かに、あの時代のブルースは唸り声みたいな歌声でちょっと怖い気がします。

そうそう、ハウリン・ウルフとかね。あと、ロバート・ジョンソンの絵のジャケットのレコードがあって、それもすごく怖かったんですよ。ちょっとどこかに連れて行かれそうな雰囲気があって。「こんなの一生聴かない」と思っていたけど、やっぱりそこに行くんですよね。

Rolling Stone Japan 編集部

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