miletが語る『visions』で手にした成長、普遍性と強さの秘密

milet(Courtesy of SMEレコーズ)

東京2020オリンピック閉会式に歌唱出演、2年連続でNHK紅白歌合戦に出場するなど大躍進を遂げてきたmiletが、待望の2ndアルバム『visions』を2月2日にリリース。いまや国民的シンガーソングライターとなった彼女が、収録曲の制作背景、iriとの共演、ラナ・デル・レイとスケート少年の映画が与えた影響について語ってくれた。


—『visions』を聴かせてもらって、大きく二つ感動しました。まず一つ目は、miletさんって本当にブレない人だなと。

milet:そうですね、どんどん軸が固くなっているような感じはあります。

—2作目でスタイルを変える人もいるなか、曲のテーマも制作陣の顔ぶれも一貫していますよね。だからこそ説得力があるというか。

milet:前作『eyes』の時はいろんな曲調や世界観の曲を入れて、自分なりに「うまくいったな」と思ってたんですよね。でも、今回はコロナ禍での制作というのもあり、「自分が何を音楽で伝えたいのか」「どういう理由で音楽をやりたいのか」みたいなのをずっと考えていたんです。みんなに会えない時間を過ごすなかで、曲作りが鏡みたいな役割を果たしてくれて。自分がここで歌う理由を確かめながら曲を作ることが多かった。そんなふうに自分を確かめながらやってきたからこそ、その軸がより明確になってきたのかなって思います。

—もう一つ感動したのは、前作より強いなって思ったんです。自信があるというか。

milet:そうかも! たぶん、「知ってほしい」よりも「届けたい」のほうが大きくなってきたというか。「私のことを知ってもらいたい」と考えながら作る時期が終わって、もっと音楽を楽しむ余裕が持てるようになったことで、「今の状況の中で作るべき曲はなんだろう」「私のために作りたい曲ってなんだろう」というふうに視界が広がり、歌う理由も増えたのかなって。そういう意味でも、自信がついたというのはその通りだと思います。



—あとは一貫性でいうと、『visions』が複数形になっているのは、『eyes』の延長線上にあるタイトルということなのかなと。

milet:同じ視力系というか(笑)。『eyes』の頃はみんなからもらってきたものをお返しするような気持ちで音楽を作ってきたんですけど、今回は私がみんなに届けるから「受け取って?」という感じ。その受け取った私の曲で、みんなの展望や未来、『vision』が広がったり作り出されていったらいいな、という思いでつけました。

—音楽的なテーマはどうでしょう?

milet:「ネガティブになるようなことは歌わない」と昔から決めてるんですけど、今回はより光に溢れているというか。私のなかではプリズムのイメージです。光の屈折や見る角度によって、色や光り方が変わったりする。そういうものを作りたかったんです。今回は曲たちも光系、光り物が多くて。

—コハダみたいな言い方(笑)。

milet:ははは(笑)。だから知らず知らずのうちに、希望が溢れているものをたくさん作っていましたね。あとは音楽的なことで言うと、新しいことにもたくさん挑戦したかったので、プロデューサーに「これまでと違う音を使ってほしい」と要望したりして。その一方で、ドラマやCMとかにつかっていただいた曲もたくさん収録しているので、新しいアルバムなんだけど耳馴染みがあるような作品になっていると思います。

—カラフルだった前作に比べて、いい意味で統一感があるように感じました。15曲中9曲がタイアップなのに、ここまでアルバムとしてのストーリーを感じられるのも凄い。

milet:この曲順で並べた時に「うわー、すごい繋がり!」って思いました。それこそ作った時期やテーマもバラバラなのに、こんなに一つのラインで繋がれるんだ、みたいな。

アルバムというのは本を開いて閉じるまでの旅みたいなものだと思っていて。激動があってなだらかなものがあって、見上げたら星空があって。そして本を閉じると、自分のなかで旅の経験値が増えるような感覚を覚える。自分の思い描いたように表現できるっていうのは作り手側の特権ですよね。『visions』に関してもこのストーリー、この流れで一度聴いてみてほしいです。

—トラックリストの構成で意識したポイントは?

milet:最初の段階で、「SEVENTH HEAVEN」と「Fly High」の場所は絶対ここ(オープニング)だと決めてました。「SEVENTH HEAVEN」は(2021年6〜7月に開催された)1st全国ツアーの名前で、本当にツアーを行いながら作った曲で。お祭りっぽい雰囲気を醸しながら、「Fly High」で一気に飛ばすみたいな。

—出だしからmiletワールド全開ですよね。歌詞もラブソングと見せかけて、ファンへの想いを全力で伝えるという。

milet:「みんな覚えてる? SEVENTH HEAVEN!」みたいな(笑)。ツアーに来てくれた人はもちろん思い出せるし、私のライブに来たことがない人も「miletのライブってこんな感じなの?」っていうのがわかってもらえたら、という曲でもありますね。

—とても楽しそうな雰囲気で。

milet:楽しかった! スタッフさんも巻き込んでコーラスに参加してもらったり(笑)。

—デビュー当初から「milet=ダーク」みたいに語られてきたじゃないですか。そのパブリックイメージをいい意味で裏切るというか。

milet:そうなんです(笑)。「inside you」でデビューしたのもあって、重厚感があってダークみたいに言ってもらえて。私もそこは住み心地がよくて、そういう曲を作るのは大好きなんですけど、実は明るいのも好きなんですよ。聴いてる曲もポップで、アップテンポなものも多いし。あとはなんだろう……コロナの影響で、私自身は逆にすごく明るくなっちゃったんですよ。

—性格が変わった(笑)。

milet:落ち込む人も多いと思うけど、「やってらんない、この暗さ!」みたいな振り切る方向に行っちゃって(笑)。空元気なところもあるけど、気持ちが引っ張ってくれる部分は絶対ある。あとは思い出が支えてくれますよね。携帯とかで昔の画像を見て、「あのときは楽しかったなー。よし、やるか!」みたいになることも多いので。そういう活力になる思い出として、「SEVENTH HEAVEN」ツアーをそのまま(曲に)凝縮しておきたいっていうのもありました。

—この曲のサビで、いろんな都市の空港が盛り込まれていますよね。パリ、ケープタウン(南アフリカ)、台北市(台湾)、LA、バンクーバー(カナダ)、ソウル(韓国)、ヤンゴン(ミャンマー)。

milet:過去に訪れた場所、いつか行きたい場所ですね。ケープタウンだけ行ったことないんですけど。私は空港が大好きなんです。入国・出国してる人たちのワクワク感とか、「今から離陸するんだ」っていうドキドキ感とか、いろんな興奮が入り混じってるし、未来に通じてるじゃないですか。ライブが始まる前の感覚って離陸前の気持ちにちょっと似てる気がします。「これから何が待ってるんだろう」みたいな、そういう空港感を詰め込みたくて。あとは、音楽でいろんな世界への道が通じたらいいなっていう想いも込めています。

—カナダは思春期に過ごしていて、フランスは以前から好きだと伺ってますが、他の都市については?

milet:今まで行った回数が一番多いのは台湾ですね。国内旅行よりもホームに帰ってきた感じがするくらい(笑)。ミャンマーは海外で歌った初めての場所。あのときすっごく大好きになりました。LAは本当に……Big Market!

—(笑)。

milet:最終的にLAでも歌ってみたいというのは目標の一つ。ソウルは親友の韓国人の子が連れて行ってくれたり、好きな場所でもあるし、K-POPにも興味あります。コーラスのローレン(・カオリ)や麦野優衣ちゃんなど、私の周りのミュージシャンでもK-POPに携わっている方が多くて。「この曲書きました!」とかInstagramで流れてくると「私もやりたい!」と思いますね。。

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