miletが語る『visions』で手にした成長、普遍性と強さの秘密

光三部作と無償の愛

—「On the Edge」は、「Who I Am」以来となるToruさん(ONE OK ROCK)との共作曲。

milet:Toruさんが作ってくださるトラックは世界観がすごくて。ちなみにこの曲は、光三部作の一つなんです。

—光をテーマにした曲?

milet:そうそう。あとの二つ、どれかわかります?

—「Shed a light」でしょ?

milet:はい!

—もう一曲は……。

milet:「Wake Me Up」ですね、朝日ということで。自分のなかで光を浴びたいっていう欲があったのか、照らしたいっていう欲があったのか……たぶんどっちもあるんですけど、そういう想いを込めて書いたのが光三部作の曲たちで。「On the Edge」についてはコロナ禍真っ只中のリモート制作だったので、みんなと繋がれているっていう私なりの確証がほしいというのもあったんですよね。

—“迷わぬように この手をどうか繋いでいて”という歌詞もありますね。

milet:ポジティブになったという話もしましたけど、ツアーが2回も中止になったりして、打ちのめされそうな瞬間もあったんですよね。そんな時に作った曲で、「私たち繋がっていられるよ」って臆病になりながらも確かめようとしているというか。自分を鼓舞するための曲でもありますね。

—「Shed a light」の歌詞もそういう感じが出てますね。

milet:そうなんですよ。それでも歌い続けるしかないから、どうか待っていてほしいと。「みんなにとっての光が、私の音楽だったらいいな」っていう思いもありました。

—世の中が窮屈だからこそ、音楽に対して希望めいたものを求める人は少なくないはずで。このアルバムに込められた光も『visions』を示しているような気がします。

milet:そうですね! 私がいろんな曲たちで光を放出することで、みんなの世界が変わるといいなーと思っていて。押し付けがましい事をしたいんじゃなくて、本当に音楽ってそういう力があると思うんですよ。一曲、ワンフレーズで、自分の気持ちがスッと切り替わるような瞬間があったりするし。そういう瞬間に私の音楽があったらいいなと願ってます。



—アルバムの最後、「Ordinary days」から「One Reason」と続く流れも感動的です。後者は映画『鹿の王 ユナと約束の旅』の主題歌ですよね。

milet:この映画にも「愛」という大きなテーマが一つあって。血の繋がっていない人間どうしの、血の繋がりよりも強い絆が描かれているところに、私の想いと重なるものがあって。私もそういう愛を誰かに与えているし、誰かに与えられている人生だなって常日頃から実感しているので……私にとって愛情表現は大きくて、それによって生きてる実感が湧くんですよね。だからこそ、「愛」について深く考える機会も多くて。

—miletさんの人生観と映画のテーマがそれだけ重なっていた。

milet:この映画はヴァンとユナっていう、血の繋がりはないけど家族と同じくらいの愛情で繋がっている親子が主人公なんです。私も「One Reason」を書いているときは自分の両親のことを考えることが多くて。大事な子供のことを想うような気持ちで親を想うというか。それくらいの大きな愛……お母さんが子供のことを「私が死んでも守りたい」と言ったりするように、私も大人になって、そういう気持ちを抱くようになってきて。こんなこと言ったら絶対怒られるけど、「私が死んでも親を守りたい」と思ってしまうくらい愛が溢れているんですよね。その気持ちが、「One Reason」を大きな歌にしてくれました。



—実はこの曲を聴いて、『eyes』のラストを飾った「The Love We’ve Made」と重なる部分があるような気がしたんです。

milet:ありますよね。

—穏やかなサウンドもそうだし、あの曲は生まれてきた子供とのピュアな愛情について歌ったものでしたよね。

milet:今回のアルバムには、柄にもなく恋愛ソングも収録してますけど、やっぱりいろんな形の愛を網羅できるものが最後に勝つんだなって(笑)。「The Love We’ve Made」も「赤ちゃんおめでとう」というエピソードがあって作った曲ですけど、家族間の愛だったり、恋人との愛だったり、いろんなものに形が変わってくれる曲だと思うし。「One Reason」もそうだと思います。無償の愛っていうか、見返りを求めない愛っていうか。

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