セレブが熱狂する「類人猿」をデザインした女性

Photo by Maria Wurtz for Rolling Stone

世界で最も名高いNFTコレクション「Bored Ape Yacht Club (ボアード・エイプ・ヨット・クラブ)」。昨年5月にネット上に登場し、類人猿をモチーフにしたデジタルアートは多くの人に注目を集めた。Bored Ape Yacht Clubを運営するのは「Yuga Labs」という企業だが、類人猿のアート作品を手がけたのは27歳のアジア系アメリカ人、Senecaである。

【写真】エミネムやジャスティン・ビーバーらが購入した「Bored Ape Yacht Club」

ある日SenecaがTwitterにログインすると(アカウント名はAll Seeing Seneca)、自分が手がけたアバターがNBA選手ステフィン・カリーのプロフィール写真に使われているのを見て、目がとび出るほど驚いた。「事情をすっかり呑み込むまでしばらく時間がかかったわ」と、彼女はローリングストーン誌に語った。Zoom越しの彼女はマンハッタンのアパートのリビングで、グレーのソファの前に胡坐をかいて座っている――ソファの下にはパステル画の山が無造作に押し込まれている。「今もそうよ。まるで嘘みたいだわ」

ソファの後ろには、本人がスタジオと呼ぶ小さな(いつも散らかった)作業場がある。中国系の両親のもとアメリカで生まれ、上海で育った彼女は、アメリカに戻ってロードアイランド・デザイン学校に通った。2016年に卒業し、フリーランスのイラストレーターとしてニューヨークに拠点を移してからは、この狭い場所が彼女のオフィスとなった。彼女はキャンペーンや広告向けの2次元アニメーション用に、生き生きとした、ときにファンタジックなキャラクターのデザインに黙々と専念した(彼女の作品は今も昔も抽象画寄りだが、自分の好きなことをお金にする「現実的な」術を模索せざるを得なかった)。

彼女の大学時代のポートフォリオに目を止めたニコール・ミュニズというクリエイティブ系のエージェントが――ミュニズ氏いわく、「線や筆運びに至るまで」彼女の技法に魅了されたそうだ――ヘルスケア、保険、再生エネルギー、金融など、様々な業界の企業とSenecaを橋渡しするようになった。V Strangeの名で知られるミュニズ氏は昨年Senecaに電話をかけ、何やら革新的な申し出をした。幼馴染がBared Ape Yacht Clubというプロジェクトを始めるのだが、自分もアドバイザーとして加わることになった、上り調子のNTFブームが本格化する前に、イメージ作りを手伝ってくれるグラフィックデザイナーを探している、というのだ。

すぐさまミュニズ氏の頭には、変化自在なSenecaの能力が思い浮かんだ。「彼女はテーマやプロジェクトに応じていろんな絵を描ける数少ないアーティストの1人です」とローリングストーン誌に語るミュニズ氏は、最近Bored Ape Yacht Clubを運営するWeb3.0企業、Yuga Labs社の共同CEOに就任したばかりだ。「非常に、非常に、稀有な存在です」 Yuga Labs社の共同設立者Gargamel氏も、彼女のキャラクターの「表情豊かさ」に舌を巻いたそうだ。「全体的な雰囲気が漂ってくるんです」と、同紙はメールでローリングストーン誌に語った。「サルなのに、こちらが求めていた雰囲気がずばり伝わってきました。生きることへの倦怠です」。ミュニズ氏もこれに同意する。「彼女はとくに表情や、キャラクターに命を吹き込むことに長けています」



Translated by Akiko Kato

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