ギターソロ完コピをめぐる複雑グルーヴ、イーグルスの王道曲から鳥居真道が徹底考察

ギターソロのディティールがある程度体に染み込んでくると今度はソロとバッキングとの関係に意識が向かうようになってきます。ソロを弾いているギタリストがバッキングのグルーヴに対してどのようなアプローチを見せているのか段々とわかってきます。もちろんこれは思い込みに過ぎないのでしょう。けれどもこういうものは主観的で良いのです。私は「ホテル・カリフォルニア」のギターソロはかなりレイドバックした感覚で演奏しているように感じました。バッキング自体はレゲエ調のリズムでリラックスしたムードも漂っていますが、リズム隊の演奏には隙間が多く、緊張の糸がピンと張り詰めたようなグルーヴで演奏されています。これを退廃と絶望を描いた歌詞にマッチしたものだと解釈できないこともない。

自分が演奏にはリズム隊の緊張感にあてられたのか演奏がハシる傾向が見られました。それは「ホテル・カリフォルニア」から必死に逃げ出そうとするかのようなグルーヴです。他方、ドン・フェルダーもジョー・ウォルシュも共に後ろ髪を引かれているかのようなタイム感で演奏しているように感じます。「うわ~ホテルから出られね~困った~」とでも言いたげな気の重いグルーヴです。もしくは世俗から隔絶された竜宮城的な空間で現実世界とは異なる時間の流れ方を感じているかのようなふわふわした無重力っぽいタイム感のようにも聴こえます。

さんざん「ホテル・カリフォルニア」をコピーしたあとで、既にコピーしていたスティーリー・ダンの「滅びゆく英雄」のギターソロを弾こうとしたらまったくうまく行きませんでした。バーナード・パーディとチャック・レイニーのコンビが繰り出し粘っこさと軽やかさが同居するシャープなグルーヴに体がまったく反応できなくなっていたのです。これはこれでおもしろい変化だと感じました。

こうしたグルーヴに関することも細かくコピーして、自分の癖と比較して初めて気がつくことです。そういう意味においてもギターソロのコピーは楽しいものなのです。ギター少年だった中学生の頃も熱心にコピーしていましたが、もっぱらギターをのみ聴いてバッキングとの関係に注意を払っていなかったので、まるでリズムが鍛えられていませんでした。その名残もあって今でもギターソロを弾くとリズムがグダグダになってしまいます。

Rolling Stone Japan 編集部

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