新進気鋭の若手俳優・須藤蓮が語る、「魂」を注ぎ込んだ初監督・主演作品への思い

Rolling Stone Japan vol.17掲載/Coffee & Cigarettes 34|須藤蓮(Photo = Mitsuru Nishimura)

音楽、文芸、映画。長年にわたって芸術の分野で表現し続ける者たち。本業も趣味も自分流のスタイルで楽しむ、そんな彼らの「大人のこだわり」にフォーカスしたRolling Stone Japanの連載。新進気鋭の若手俳優、須藤蓮が初監督・主演を務め、台北金馬映画祭に公式出品となった映画が『逆光』だ。須藤と脚本を手がけた渡辺あやの二人が宣伝・配給を行っている完全自主制作映画。その制作の裏側と映画への熱い想いを語ってくれた。

Coffee & Cigarettes 34 | 須藤蓮

「映画監督になるつもりは全然なかったですし、そんなにたくさん映画を観てきたわけでもないんです、恥ずかしながら。そういう意味ではドラマ『ワンダーウォール~京都発地域ドラマ~』(以下『ワンダーウォール』)で出会った渡辺あやさんの存在が、僕にとってはとても大きくて」
『ジョゼと虎と魚たち』や『メゾン・ド・ヒミコ』、 NHK朝ドラ「カーネーション」などで知られる脚本家・渡辺あやが見出した25歳の新鋭、須藤蓮による初監督・主演作『逆光』。1970年代の広島県・尾道を舞台に若き男女の愛憎を描いた本作は、渡辺と須藤が自ら宣伝・配給まで行っている完全自主制作映画である。

「『ワンダーウォール』の撮影現場に立ち会った時、僕がこれまでずっと探してきた『本気でものづくりをする場所』というか、『自分のありのままを、本気でぶつけていい場所』をようやく見つけたような気持ちになったんです。おかげで撮影が終わってからは、しばらく途方に暮れてしまって。あれほどの体験ができる現場にはなかなか出会えず、自分自身を持て余しているような状態が続いていました」

慶應義塾大学在学中の2016年、「第31回 MEN’S NON-NO 専属モデルオーディション」でファイナリストとなり、翌2017年秋より俳優として活動を開始。そんな矢先に「人生を変えるほどの作品」に出会ってしまった須藤は、渡辺とまた現場を共にしたいとの一心で、自ら書いた脚本を彼女に送り意見を仰ぐなどしていたという。どこか師弟関係のような、不思議な交流を深めていくなか、「尾道で撮影するのはどうだろう?」と持ちかけたのは渡辺だった。
「LINEでメッセージをいただいた、その3日後にはもう尾道にいました(笑)。あやさんと合流して二人でシナリオハンティングを始めると、すぐに登場人物のイメージも浮かんできましたね。あとは腕のいいカメラマンと、腕のいい音楽家、それから腕のいい衣装部を全部自分で揃えたら(監督も)できるんじゃないかと」


©2021『逆光』FILM

そうして起用されたのは、須藤しぐま(撮影)、高橋達之真(衣装)、大友良英(音楽)という、かねてより須藤や渡辺と親交のあるクリエーターたちだ。
「自分に特別な才能がないぶん『この人と仕事がしたい!』というアンテナを常に張り巡らせていて。昔、古着屋でバイトしていたことがあるんですけど、自分自身にセンスがなくても『きっとこの人が、お店で一番センスがあるんだろうな』というのは分かるんです(笑)。それが今回、衣装を手掛けてくれた高橋(達之真)さん。須藤しぐまさんは、司法試験を諦めて俳優の仕事を始めたばかりの頃に『この人に撮ってもらいたい』と初めて思えた友人です」

Photo = Mitsuru Nishimura  Styling = Tatsunoshin Takahashi (Foyer, FOL)

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