スピルバーグ節全開、『ウエスト・サイド・ストーリー』が問答無用の傑作となった理由

アリアナ・デボーズ、『ウエスト・サイド・ストーリー』より(Photo by Niko Tavernise (C)2021 20th Century Studios. All Rights Reserved.)

映画『ウエスト・サイド・ストーリー』が2月11日(祝・金)に公開される。第79回ゴールデングローブ賞では作品賞・主演女優賞・助演女優賞の最多3冠を獲得、第94回アカデミー賞では作品賞と監督賞を含む主要7部門でノミネート。 巨匠スティーブン・スピルバーグによる伝説のミュージカルのリメイクは、オールドスクールなハリウッド作品に敬意を払いつつ、『ロミオとジュリエット』におけるストリートギャングの対立という構図を持ち込むことで、原作とは異なる緊張感を生み出すことに成功した。米ローリングストーン誌による映画評をお届けする。

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ミュージカル映画の復権、そんな言葉は聞き飽きているかもしれない。ブロードウェイの話題作『ディア・エヴァン・ハンセン』、カルト的人気を誇る『The Prom』、トニー賞に輝いた『イン・ザ・ハイツ』、名作を生んだ作曲家の自伝ミュージカルを映画化した『tick tick...boom チック、チック…ブーン』など、近年では歌とダンスを軸にした作品が脚光を浴びている。独創的で奇妙なものが好みなら、レオス・カラックスとスパークスがコラボレートした『アネット』(世間の人々の見る目が確かなら、そう遠くないうちにミッドナイトムービーの定番となるであろう)をチェックしてみるといい。よりストレートなものを楽しみたいなら、ミュージカル版のキャストをそのまま起用してコンサート映画風に仕上げるという至難の業に成功した『ハミルトン』がお勧めだ。またキャッチーで始終合唱したくなるようなコーラスに満ちた、優れたアニメーション作品も数多く登場した。かつて鉄板ジャンルだったミュージカル映画が新たな黄金期を迎えつつある、そんな記事を目にすることも多くなった。

秀作が数多く発表されていることは確かだが、ミュージカル映画のカムバックというのは大げさだという意見もあるに違いない。しかし、新世代のジェッツが一斉に人種指を鳴らすシーンを観た瞬間、その考えは変わるはずだ。


(C)2021 20th Century Studios. All Rights Reserved.

1961年にオスカーを受賞したブロードウェイミュージカルの歴史的名作『ウエスト・サイド・ストーリー』のスティーヴン・スピルバーグによるリメイクは、エキサイティングであると同時にため息が出るほど美しくあろうとする。その試みは見事に成功しており、誰もが馴染みのあるセットの数々と、目の覚めるような色彩が観客を魅了する。通りを練り歩くやさぐれた若者が突如披露するバレエのムーヴメント、ダイナミックなジャンプ、エレガントにさえ感じられるオールドスクールな風貌のならず者たち、街角を舞台に繰り広げられる見事にシンクロしたダンスまで、どこを取ってもロバート・ワイズが演じたオリジナル版に見劣りしない。単なるトレンドの踏襲とは格が違う今作こそ、ミュージカル映画の復権を宣言するに相応しい。

Translated by Masaaki Yoshida

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