tricotらしい「うねり」の正体─実際に出来上がった楽曲を聴くと、疾走感の中にもtricotらしい「うねり」みたいなものを感じさせますよね。中嶋:特にDメロはそうですよね。楽曲全体では、どちらかというとキャッチーさを意識していたのですが、“根くらべでは恋は叶わない”と歌う部分はコード進行も複雑にして、「どこへ向かっていくのか分からないような感じにしよう」と思いました。
吉田:ドラマの中で使っていただくのは楽曲の前半部分ですが、それを聴いて気になってくださった方たちが、続きが気になって聴いてみると「こんな展開があるのか」「こんなことをも歌っているのか」と思ってもらえたらいいなと。それを踏まえて最初から聴き直してみると、また違った感じ方をしてもらえると思います。
─ギターのサウンド面ではどんなことにこだわりましたか?キダ:上の方で鳴っているギターは、突き刺すような鋭い感じのフレーズや音色を意識しましたね。「溢れ出た女性の感情」みたいなものが表現できたらいいなと。ナンバーガールの田渕ひさ子さんが弾いているような、ショートディレイのかかった音色とか、ハヌマーンの山田亮一さんみたいなギターサウンドを参考にしていますね。
─イントロ部分で鳴っている、高速の低音ギターも印象的です。キダ:心がざわついているような感じが出せたらなと。
ヒロミ:ベースは、ギターが高音で鋭い感じだったのもあって、あまりジャキジャキし過ぎず曲の下の方でどっしり支えるような感じにしたいなと思いました。原作の中の、尖った部分と柔らかい部分が同居しているような感じが音色でも出せたらいいなと。
─“特別でいたいなら ほんの少しくらいはいつも 損しなければいけないよ”というフレーズは、どのように思いついたのでしょうか。中嶋:原作の中に近いセリフがあるんですよ。例えば恋人や家族みたいに距離が近い関係性だと、取り繕ったりカッコつけたりしなくていいぶん雑に扱われることってあるじゃないですか。ちょっと他人くらいの方が優しくされる。それって理不尽やし、「その人にとって特別でいる方が損やん」と思うこととか実際にあったので(笑)、このセリフは是非とも歌詞にして入れたいと思いました。
─“根比べでは恋は叶わない”というラインは、どんなふうに思いついたのですか?中嶋:自分にその経験があったかどうかは分からないんですけど(笑)、原作の二人がどっちも「自分」をさらけ出さずに我慢して、それでくっついたり離れたり不器用に繰り返しているところを見て、すごくもどかしさを感じたので、こういう表現の仕方でエールを送ったつもりです。
─先ほど男性目線、女性目線の話になりましたが、メンバー同士で恋愛話などすることもあります?中嶋:私はめちゃめちゃしたいんですけど(笑)、ネタが全然なくて……。ほんと、想像を絶するくらい何もないんですよ。なので人の恋愛の話をしたり、自分が恋愛をしたいという話をひたすらみんなに聞かせたりしています。
─あははは。ヒロミ:私も面白いことがあったら話したいんですけど、特に目立った動きがないので(笑)、イッキュウが話してくれる、それこそ女性らしい恋愛話を聞いたりとかして盛り上がっています。
中嶋:もっとバンドマンに打ち上げとかで口説かれるのかなとか思ってたんですけど、12年間誰も一度もない!(笑)「ほんとにないですよね?」と3人に念を押しても「ほんとに何もない」って。
ヒロミ:3人もいるのになあ(笑)。
中嶋:そっか、ギャルバンって意外とモテへんのや……と思ってたら、周りのギャルバンはみんな口説かれた経験があった(笑)。なんでなんでしょう。
─吉田さんに「男性の立場」からの意見を聞くことはないんですか?中嶋:他の男友達には男性目線のアドバイスをもらうんですけど、吉田さんは私たちと同じギャル目線で一緒に話しているので(笑)、あまり参考になる意見がないんですよね。
吉田:僕はよそでいっぱいくっつけてるから。
中嶋:なんで私たちはくっつけてくれないんですか!
全員:(笑)
キダ モティフォ(Gt, Cho)ヒロミ・ヒロヒロ(Ba, Cho)