渡瀬マキが語る半生「歌うことを息をするぐらい普通のことにしたい」

―電子書籍のエッセイ『Essay 渡瀬マキ エッセイ』によると、お子さんが生まれるまでは人見知りだったそうですね。デビュー当時もそうだったわけですか?

スタッフに聞いても、「当時はすごかった」って言われちゃうぐらい、人見知りがものすごくて(笑)。私は17歳の高校三年生のときに、プロダクションの方に声を掛けていただいて上京したんですけど、田舎者なので、「東京=怖いところ」、「芸能関係の世界にいる人たちはもっと怖い人」みたいなイメージが勝手にあって。そのプロダクションの社長もマネージャーも男性だったんですけど、とくに異性に対しては「シャッターガラガラ」って感じだったので、その2人にすら警戒心があったんですよ(笑)。LINDBERGになってからも、すごく親しく話して、「あ、この人だったら」って心を開くまでがすごく長かったんです。ツアースタッフのPAさん、照明さんも、時間をかけて信頼関係を築いて、やっと心を開ける感じで。例えば、いつも来てくれているスタッフが来れなくて、違う方が来たってなっちゃうと、また「シャッターガラガラ」みたいな(笑)。

―すぐシャッター閉めちゃうんですね(笑)。

困っちゃいますよね(笑)。「なんでそんなバカなことをしたんだろう」って、今は反省しているんですけど、そのときはもう、相手の気持ちを考える余裕もなくて、大変失礼な感じでした。それぐらいすごい人見知りだったんですけど、子どもが生まれて公園デビューするときに、どうやったらこの子が幼稚園生活や公園で楽しく遊べるかということだけを考えたら、「私のことなんかどうでもええやん」って、180度変わったんです。公園にお母さんが1人で子どもを連れてくると、もう黙ってられない、放っておけない。

―そういうときは、自分から声を掛けにいくんですか?

もちろんです。「こんにちはー! なんてお名前ですかあ?」って(笑)。でも、それは全然苦痛じゃなかったです。そういう風にした方が、自分もすごく気持ち良かったし、「今まではどうして私はシャッターガラガラだったんだろう?」というぐらい、全然平気でした。

―バンドのフロントマンとして大勢の前でステージの上に立つときは、普段の人見知りだった渡瀬さんとはまた違ったんですかね?

う~ん……どう思います(笑)?

―1990年はシングルを5枚もリリースしてますし、それだけブレイクと呼ばれてる毎日のように知らない人と会っていたんじゃないかと思うんですよ。だけどそういうときは「これは仕事だ」と思うことで人見知りが発動しなかったのかなって。

でも、スタッフさんには発動しちゃってたじゃないですか(笑)。

―そうですけど(笑)。お客さんを前にすると変わりますよね?

それはもちろん!……ああ~、でもどうかなあ。昔のビデオでMCを聴くと、「かっこつけてんなあ」って思います。真面目すぎちゃって、全然面白い話もしてないし(笑)。でも当時はたぶん、それが自分の中で自然だったんです。それがだんだん変化していくのも、ものすごく自然なんですよね。今ではもう、「どんなことして笑かしたろかな?」って、そっちに重点を置いてしまうぐらいで。それは、少しずつ自然に変化していったことですね。

Rolling Stone Japan 編集部

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