渡瀬マキが語る半生「歌うことを息をするぐらい普通のことにしたい」



―最近、家で聴いている音楽ってありますか。


昔から、あまり家でじっくり音楽を聴かないんですよ。生活音が好きなんですよね。洗濯機の音とか、水が流れる音、外をバスが通る音とか、そういう音を聴いていたいので、あんまりテレビもつけたくないんです。朝だったら鳥がめちゃめちゃ鳴いてますし、そういうのを聴いているのが好きなので、あんまり音楽をかけることがないんです。

―それは、生まれ育った環境と関係ありますか。

とくに、病気になってからなんですけど、耳とか、体が自然を求めてまして。だから近所の神社をブラブラしたりとか、渓谷に行ったりとか、そういう自然の中に身を置くと落ち着くんですよね。それは年齢的なこともあるかもしれないですけど、やっぱり自分が生まれ育った環境がすごく大きいと思います。

―野山を駆け回るような子どもだったんですよね。山に行って葉っぱにマヨネーズをかけて食べていたという(笑)。

そうです(笑)。マヨネーズを持って出かけて、「どの葉っぱが美味しいかな?」って。ちょっとおぞましいですよね。今思うとよく生きてたなっていう(笑)。そういう感じで育っていたので、やっぱり自然が好きですね。

―そういう自然や生活音に囲まれていると落ち着くんですね。

でもね、一人暮らししてる息子が家に帰ってきたりすると、「マキちゃん、これめっちゃいいよ」ってミュージック・ビデオを見せてくれたりとか、教えてくれるんです。BTSがまだそんなに知られていないときも、息子がMVをガンガン見せてきて、「とにかくすごいから。踊れるだけじゃなくて歌もすごいから」って勧めてきてそれで知ったりとか。いろんなアーティストを教えてくれますし、私も気になる人は調べて聴いてみたりします。今日はたまたま10-FEETを久しぶりに聴いたんですけど、やっぱり大好きだなあ、と思って。

―そうなんですね。いつぐらいから聴いているんですか?

ちょうど40歳のときに、LINDBERGがavexで1年間限定で復活して(2009年)、10-FEETがオーガナイズしているフェス「京都大作戦」に呼んでもらったんです。恥ずかしながら、そのときまで10-FEETというバンドを知らなかったんですけど、初めてそのフェスで10-FEETの演奏を聴いたときに、小学生のときに松田聖子さんを聴いて以来の、「ガガガガガーン!」っていう感じだったんですよ。

―TAKUMAさんの歌が松田聖子さんの歌と同じ衝撃を与えたわけですか。

そうなんです。なぜか涙がバーッて出てきて、「なんなのこの人たち!?」と思って、それからもう彼らのアルバムを買って全部聴いて、ライブにも行きました。今日も、久しぶりに聴いたら、やっぱり胸にグッときたんです。40歳で彼らを知って、年齢関係なくガーンときて。普通、多感な時期に聴いた音楽って自分の人生に大きく関わると思うんですけど、大人になってから聴いた音楽でもこんなに好きになるんやなって、再確認した次第です。

Rolling Stone Japan 編集部

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