西岡恭蔵「最愛の妻・KUROとの別れから晩年のアルバムをたどる」

我が心のヤスガーズ・ファーム / 西岡恭蔵

中部:これは話したいことがいっぱいある曲なんだけれど(笑)。この歌は、1995年に長く中断されていた大阪の歴史的な野外コンサートである「春一番」が復活するんですね。そのために作った、また新しいテーマソングなんです。恭蔵さんは、最初の春一番を1971年にやるときに「春一番」という歌を作っていて……。

田家:『街行き村行き』の中にありましたね。

中部:はい。復活したときに「我が心のヤスガーズ・ファーム」というのを作って、この歌を歌うんです。だから、ここで歌われている「長い髪をバンダナで止め」っていうのは男の人ですよ(笑)。

田家:主催していた福岡風太さんという。

中部:風太さんのことを言っているんだけど、西岡さんの詞は、そこらへんが本当に巧みなんですよね。風太さんのことを歌いながら、それがだんだんKUROさんのことに聴こえてくるみたいな……。それで、この1995年の春一番復活のときに恭蔵さんはKUROさんと行っているんです。KUROさんは既にがんを発病なさってますから、このコンサートの会場に病身のKUROさんがいらっしゃるんですよ。そこでこの歌を恭蔵さんが歌うんですね。そのときの映像を見せてもらったんだけれど、「歌を歌っている途中で涙を流したら許してくれ」ってお客さんに言っているんです。「泣いたら許してくれ」「今日は危ない」と言っているんです。それでも泣かないで最後まできちんと歌うんですけれど、やっぱりこの歌をステージの恭蔵さんが歌って、客席にいるKUROさんが聴いているというシチュエーションは、この2人にしか分からない、また軽い言葉に聴こえちゃうかもしれないけど、たった2人の愛の世界がコンサート会場の中でできちゃっているんでしょうね。

田家:この歌を春一番の再開ステージで歌った恭蔵さんの気持ちを中部さんは「覚悟」と表現されていました。中部さんが選ばれた6曲目、『Farewell Song』のタイトル曲「Farewell Song」。

Rolling Stone Japan 編集部

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