スラッシュ「最低な状況も愛していた」ガンズ・アンド・ローゼズで得た人生の教訓

新作『4』での英断、ロック不遇の時代に物申す

―5年前にガンズ・アンド・ローゼズに復帰しましたが、2枚目のソロアルバムもリリースしています。ここまでご自身のバンドを率いてきて、よかったと思えることは?

スラッシュ:ロックバンドのメンバーであることや有名人であることに伴う、ありとあらゆるくだらないこと、面倒なこと、俺たちを煩わせるすべて……こうしたものは、(ザ・コンスピレターズにおいては)皆無だ。俺たちの願いは、みんなで集まって演奏し、レコーディングしてツアーをすること。俺が続けているのは、楽しい時間が過ごせるから。それに、完全にストレスフリーだからだ。

―ニューアルバム『4』のラストを飾る「Fall Back To Earth」のイントロのギターサウンドは、最高に美しいですね。いったいどうやってこうも素晴らしいフレーズを思いつくのでしょうか?

スラッシュ:南アフリカのクルーガー国立公園のサファリに行ったんだ。ギターも持っていった。ベタな表現だと思われたくはないけど、そこでは何もかもが美しくて、自然に囲まれながら壮大な夜空の下でのんびりするのは最高の気分だった。あのメロディーは、ふと浮かんできたものだ。でも、次々とメロディーがあふれてきたから、何かの前兆だったのかもしれない。自然から大いにインスパイアされたものなんだ。



―『4』では、デイヴ・コブという有名なカントリー・ミュージックのプロデューサーとタッグを組んでいますが、アルバムとしてはかなりロックな仕上がりです。おふたりの間にどのような化学反応が起きたのでしょうか?

スラッシュ:「腕の立つロック・プロデューサーを知らないか?」とふたりの人物に相談した。こうした人材は本当に希少だから。結果として、俺の判断は正しかった。4人の候補者リストの中にデイヴ・コブの名前があったんだ。

カントリーは普段の俺がやるジャンルではないかもしれないが、その魂みたいなものはわかっているつもりだ。それに、オールドスクールなカントリー・ミュージックは大好きだ。デイヴの音楽のクールな点は——いかにも現代的なのだが——どこまでもミニマルで、人間味があって、ある意味リアルでエモーショナルなところだ。だから、こうした要素を掘り下げることにした。それにデイヴは、ライヴァル・サンズ(のアルバム)のプロデュースも手がけていた。近年のロックバンドとしては、かなりいいサウンドだとかねてから思っていたんだ。

会話の中でデイヴは、ロックバンドをライブレコーディングしたいと長年願いつづけてきたことを明かしてくれた。そこで俺は、「俺だって、何年も前からロックバンドのライブレコーディングを実現しようとしてきた。でも、どのプロデューサーもやらせてくれなかった」と答えた。これを機に、俺たちは意気投合した。スタジオに着くや否やセッションをはじめて、速攻でレコーディングに取り掛かった。俺たちが演奏している間、ずっとデイヴはスタジオにいた。(こうしたプロセスは)俺にとって本当にカタルシスを感じる経験だった。

―ロック・ミュージックの人気は、全盛期と比べると低下しました。こうした状況を変えたいという思いに駆られたことはありますか?

スラッシュ:俺は生粋のロックンローラーであり、ロックは俺の原点だ。ロックは俺を鼓舞してくれる。すべてを犠牲にしたのもロックのため。俺にはロックの血が流れている。ほかにどんな音楽が流行っているかなんて知ったことじゃない。これが俺の生き方なんだ。だが、色んなジャンルの音楽を愛するミュージシャン及びアーティストとして言っておくが、世の中には優れたレコードをつくる奴らがたくさんいるし、それがロックである必要がないのも事実だ。

俺としては、音楽業界的にもてはやされているジャンルを気にしたことなんて一度もない。昔みたいにロックが売れなくなったいま、俺はジャンルとしてのロックの完全性が崩壊していくのを目の当たりにしてきた。ロックが一大産業になった時代のカネと馬鹿げた栄光のせいだ。90年代以降、MP3やファイル共有ソフトの到来によって、リスナーが何を聴いているかなんて気にせずに、誰もが注目されたいと願うようになった。それ以来、ロックの勢いは急降下している。だからいまは、自分の信念を貫き、自分が聴きたいと思える好きなものを精一杯つくり続けることにしている。

音楽業界のせいで商業的存在としてのロックが共食いのような状況に陥ってしまったのは興味深い。すべては食い尽くされてしまったから、ここにはカネもない。いまの若い奴らは、ただ好きだから音楽を発見し、音楽をやっている。これは素晴らしいことだし、彼らのエネルギーは輝いている。俺自身、勇気を与えられるよ。あれこれ考えてみると、ほかの奴らがそれぞれのことをしてきたのに対し、結局俺は、いつの時代も自分の腕を磨きつづけてきたんだ。

Translated by Shoko Natori

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