メキシコからの移民女性、性的人身売買の実態を証言「逃げ出さないと死んでしまう」

約束された「素晴らしい未来」とは地獄だった

被告らは性的人身売買、性的人身売買共謀、未成年の性的人身売買、州をまたいだ売春、密入国あっせん、資金洗浄共謀と言った罪で極刑の終身刑を求刑された。パンデミックによる長い遅延の末、アリン・ロス判事はメレンデス-ペレス被告の3人の叔父――ホセ・ミゲル・メレンデス-ロハス被告、ホセ・オズワルド・メレンデス-ラホス被告、ロザリオ・メレンデス-ロハス被告――に懲役39年を言い渡した。また10日には、メレンデス-ペレスの従兄弟の子供に当たるアベル・ロメロ-メレンデスに懲役20年を言い渡した。

裁判での証言によると、デリアさんはメキシコのチアパス州にある小さな町で、学校に通いながらアイスクリームショップで働いていた。16歳のメレンデス-ペレス被告と出会ったとき、彼女は13歳だった。「ハンサムで優しい人だと思ったので、彼から付き合いたいと言われたときはすごく嬉しかったです」。彼女は法廷の演台からこう述べた。フューシャのブラウスに千鳥格子のジャケットを身にまとい、短く切った髪に前髪をサイドに流していた。「新鮮ですね――今までやったことなかったので」と、髪型について彼女はこう言った。「人身売買業者からは着るものや食べるもの、髪型まで指図されていました。だから今日は、もう私は指図されないんだってことを見せてやりたかったんです」。黒の厚底ブーツを履いていても、彼女の身長は5フィートにも届かない。彼女がフランシスコと呼ぶメレンデス-ペレス被告からは、飢えている状況に付け込まれたという――被告の家族と同居していた時は、食料を提供してもらっていた。ちなみに被告の家があったテナンシゴは売春と愛の街として有名だ。「彼は素晴らしい未来を約束してくれました。でも全部ウソだったんです」

デリアさんによれば、メレンデス-ペレス被告は彼女にこう言った。アメリカに渡り、数年間は働いて金をためなくちゃいけない、その後メキシコに戻って家族を作ろう。だがいざクイーンズに到着すると、彼女はメレンデス-ペレス被告と叔父たちから売春を強要された。

1日に30~50人もの男を相手にしたことなど、デリアさんは恐ろしいほど詳細に、耐え忍んだ暴力と恐喝の日々を振り返った。デリアさんに支払われるべき賠償額を判断するにあたり、ロス判事は売春1件あたり35ドルとしてデリアさんの3年半の稼ぎを算出した。その額およそ120万ドル(そのうち半分は、客のところまで送り迎えした運転手に払われた。判事は人身売買業者の取り分およそ58万8250ドルの他、医療費として5万3000ドルもデリアさんに支払われるべきだと述べた)。「フランシスコは、私に売春させるためならどんなことでもやりました」とデリアさん。「私が性病になるかもしれないと怯えても、関係ありませんでした。客から殺されると私がパニックを起こしても、私がひもじい思いをしてヘトヘトに疲れていても、関係ありませんでした。彼はただ私に稼がせることしか頭にありませんでした」

【写真】デリアさんは自力で逃げ出したことを忘れないよう、手描きの絵を額縁に入れて枕元に置いている。その絵には英語とスペイン語で「あなたは逃げ出した。もう大丈夫」と書かれている。(Courtesy of Delia)

Translated by Akiko Kato

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