ヴァン・ヘイレンの音楽を歌い継ぐサミー・ヘイガー 1986年のステージを振り返る

ヴァン・ヘイレンの音楽を歌い継ぐ義務

ヘイガーがついにロス時代の楽曲を受け入れたのは、至極当然な流れだろう。2020年にエディ・ヴァン・ヘイレンがこの世を去り、ヴァン・ヘイレンは永遠に幕を閉じた。パンデミック前にはデイヴィッド・リー・ロスがソロツアーを敢行して跡を継ごうと試みたが、具体的な説明もないままキャンセルされた昨年のラスベガス公演をもって、引退を発表した。

息子のウルフギャング・ヴァン・ヘイレンは、自らのバンドMammoth WVHを従えて昨年からソロ活動を行っているが、父親の楽曲は一切演奏しないとはっきり公言している。「君らは相変わらずだな」昔の曲を演奏してくれとインターネット上で懇願するファンに向けて、彼はこう伝えた。「君らのために『パナマ』を演奏したりするもんか」

弟の死後、アレックス・ヴァン・ヘイレンは表舞台にまったく姿を見せていないが、彼が往年のヴァン・ヘイレン楽曲を専門に演奏する、(ピンク・フロイドで言うところの)ニック・メイスンズ・ソーサーフル・オブ・シークレッツみたいなグループを結成するとは想像しがたい。ゲイリー・シェローン・ヴァン・ヘイレン・エクスペリエンスのような企画が出てくる可能性もなきにしもあらずだが、おそらく現実にはないだろう。

こういった状況から、いまでもバンドへの忠誠心を示そうとしている元メンバーはサミー・ヘイガーとマイケル・アンソニーだけとなった。彼らのバンドにはヴァン・ヘイレンの姓を持つ者はいないかもしれないが、「ヴァン・ヘイガー」時代のメンバーの半分が在籍している。すなわち、エディの追悼コンサートで現存するメンバー全員が顔を揃える可能性がない以上、世界が目にするヴァン・ヘイレンにもっとも近い存在がこの2人だ。ヴァン・ヘイレンの音楽を歌い継ぐ義務を、彼らは背負っている。

From Rolling Stone US.

Translated by Akiko Kato

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