ブリング・ミー・ザ・ホライズンが語る、依存症からの回復、次世代エモ、セルフケアの大切さ

ブリング・ミー・ザ・ホライズン(Photo by Lindsey Byrnes for Rolling Stone UK)

ブリング・ミー・ザ・ホライズンのフロントマン、オリヴァー・サイクスは新型コロナウイルスのパンデミックで大きな浮き沈みを体験した。Netflixやゲームに興じて社会から隔絶し、人生の意義を見失い、悪習慣に逆戻りした後、創作活動で日々感じていた不安や混乱と折り合いを付けようとした。その結果、ドラマーのマット・ニコルスも認めるように、Zoom会議を繰り返した末に完成したEP『Post Human: Survival Horror』によって活気づいた音楽ファンが集まり、評論家もみな一様に「バンド史上最高傑作」を絶賛した。

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傑作をリリースした後には、考える時間、忍耐、そして環境の変化が必要だ。そのためにバンドが選んだのはロサンゼルスだった。イギリス人の感覚からすると、ここの冬の朝は奇妙だ。日焼けしそうなほど日差しが降り注ぎ、インフィニティプールの周りには湯気ともやが原始の泉のごとく立ち込め、目の前に広がる渓谷に向かってまっすぐ零れ落ちる。前述のパンデミックをテーマにしたEPのタイトルが『Post Human: Survival Horror』というバンドには、まさにピッタリの光景だ

ブリング・ミー・ザ・ホライズンは『Post Human』シリーズ次回作の音楽性を模索すべく、丘の斜面に立つ黒光りした石の大邸宅に滞在している。マーヴェルの悪役や意地の悪いIT連中が所有する類の豪邸、と言っても過言ではないだろう。隣の家では週末のたびに賑やかなパーティが開かれていた。彼らの推測では、こんな生活を送る人間はそういないだろうから、おそらくバケーションレンタルだろう。少なくともブリング・ミー・ザ・ホライズンとは無縁の生活だ。メンバーの半分は酒を飲まず、毎朝ジムで運動し、毎晩家で健康的な食事をとり、夜9時半には就寝するという規則正しい生活を送っている。

オリヴァーはインタビューのためにベランダへ向かい、眠りから覚めたヴァンパイアのように日光の下に姿をさらした。よく見ると、彼には確かに牙がある。昨年の夏、モデルでシンガーの妻アリッサ・ソールズとともに八重歯を差し歯にしたのだ。

扇動的なライブパフォーマンスとはうらはらに、普段の彼は引っ込み思案だ。とはいえインタビューでお決まりの質問をぶつければ――ヨークシャーらしい抑揚のない口調で、はっきり断定することこそないものの――非常に重々しい、あるいは歯に衣着せない答えが常に返ってくる。こうしたミステリアスなギャップに誰もが虚を突かれる。今日のいでたちは白い手織りのシャツにプラダの黒い万能ブーツに身を包み、モノグラム入りの財布、そして十字架のピアス。5週間の仮住まいを満喫していることは明らかだ。ファンもここ数カ月の変化に気づき、彼が今までで一番健康で幸せそうだ、とソーシャルメディアにコメントしている。


ブリング・ミー・ザ・ホライズンのオリヴァー・サイクス(Photo by Lindsey Byrnes)

Translated by Akiko Kato

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