ササミが語る韓国のルーツ、日本での家族史、優しさに満ちたヘヴィメタル

ロサンゼルスでのササミ、2021年12月(Photo by Daniel Topete for Rolling Stone)

 
USインディーの俊英シンガーソングライターが、2ndアルバムでヘヴィメタルに覚醒。人呼んで「悪魔のブライアン・ウィルソン」、ササミ(SASAMI)の挑戦作『Squeeze』が大きな話題を集めている。彼女はいったい何者なのか?

アメリカ北西部ワシントン州シアトル沖合の島にある心地よいログハウスの中で、マグカップに注がれたグリーンティーをすすりながらササミことササミ・アシュワースは、思いつく限りもっともヘヴィなメタルリフをひねり出した。時は2020年2月で、ロサンゼルスを拠点とするシンガーソングライターの彼女は、ワシントン州にある作曲家向けのリトリートに逃げ込んでいた。昨夜のライブ以来、ずっと耳鳴りがしている。友人でコラボレーターでもあるキング・タフことカイル・トーマスに勧められて、バーモント州を拠点に活動するメタルバンド・BARISHIのライブを観に行ったのだ。安酒場中にバンドが奏でる凶悪なデスメタルサウンドが響きわたり、ササミはすっかり有頂天になった。「羽目を外しすぎちゃった」と、彼女は笑いながら振り返る。「大暴れしていたのは私だけ。ほかの人たちはみんな、すごく落ち着き払っていた」

ササミの音楽の世界において、ヘヴィメタルが中心的なポジションを占めたことは一度たりともなかった。幼少期にフレンチホルンを習い、クラシック音楽を勉強した彼女は、のちにチェリー・グレイザーのライブで演奏したり、ヴァガボンやハンド・ハビッツといったインディー界の人気アーティストたちとレコーディングするまでになった。自身の名を冠した2019年のデビューアルバム『SASAMI』は、親密なインディーロックとシューゲイザーが融合した楽曲の集大成である。そんな彼女が鋭い牙をもつ爆音に惹かれるようになるのは、時間の問題だった。

「メンバー全員が女性のバンドといつもツアーを回っていたから、音響スタッフの気配りや自分が注目に値する人間だってことを証明するために身体的なバトルを強いるようになったのかもしれない」とササミは語る。「アンプの音量を下げるようにといつも言われるの。だから、決意表明みたいなものね。目立つなと言われているような気がすればするほど、私はアンプの音量を上げる。すると、私の声もどんどんアグレッシブになる」



くだんのBARISHIのライブ後に「狂気じみた生活に放り込まれた」31歳のササミは、2月25日にDominoからリリースされた2ndアルバム『Squeeze』にヘヴィメタルとインダストリアルなサウンドをふんだんに盛り込んだ。『Squeeze』は、必ずしもこうしたジャンルに属するアルバムではないものの、ササミはメタル・ミュージックとこのジャンルに内在する攻撃性を活かして、外の世界が炎に包まれる中、自分ひとりが孤独に空回りすることへの憤りや怒りといった空想を裏打ちした。普段は超攻撃的な音楽に逃避を求めない人たちに、誰もが経験する怒りの捌け口を提供すること。これがニューアルバムに込められたササミの願いだ。

端的に言って『Squeeze』は、どん底への招待状である。だがそれは、限りない優しさと温もりに満ちた招待状でもある。

「ロックダウンによって夢想する時間が増えたことは間違いない。音楽づくりを除いて、何もしていなかったから」とササミは言う。「パンデミックはまるで大虐殺のようだったし、抗議活動は不正と荒廃の極みだった。私にとって音楽は、感情を呼び起こすガソリンのようなもの。だから、周縁化された人たちが共感できて、各自の経験と向き合うための燃料になると同時にカタルシスをもたらすような音楽がつくりたかった」

ササミの親しい友人であり、コラボレーターでもあるハンド・ハビッツのギタリスト兼シンガーのメグ・ダフィーは、メールで次のように綴っている。「私は、ササミの徹底ぶりを尊敬している。何かを実現したいと決心すると、本当に最後までやり通す(……)それは素晴らしいことだし、まったく新しい方向に引き寄せられ、そこに勇敢に飛び込む姿にはとても勇気づけられる」

カイル・トーマスは、ササミを「悪魔のブライアン・ウィルソン」と表現する。「彼女には、楽曲に求められるアレンジを正確に見極めて、それを完璧に実行する稀有な才能がある」と彼はメールで述べた。

Translated by Shoko Natori

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