コロナ後遺症に苦しむ人々 米国社会の実態

2021年6月29日、米ロサンゼルスのヴェニスビーチ付近。遊歩道沿いに並ぶホームレスのテントのそばを自転車に乗った人々が通り過ぎる。(Photo by Jae C. Hong/AP)

推定数百万人のアメリカ人が新型コロナウイルス感染後に慢性疾患を発症。フリーランスの立場で仕事をする「ギグ・エコノミー」と呼ばれる人たちは大きな影響を受けている。

【画像を見る】コロナ危機、米オレゴン州ではストリッパーの宅配サービスがスタート

ウェンディ・テイラーさんにとって、冬の冷え込みは過酷だ。コロナ後遺症を患って2年、気温が下がると痛みや苦痛が増すことを彼女は知っている。とくに1回目の新型コロナウイルス感染で発症した両手の重い関節炎には堪える。

ヒューストン在住のテイラーさんは、アメリカでコロナ後遺症に悩む推定数百万人のうちの1人。おそらく路上生活の中で一番つらいのは、寒い時期の水仕事だと彼女は言う。彼女は今、ゴミ捨て場から拾ってきた防水シートと8×8インチの折り畳みフレームで作った小屋で暮らしている。

「コンロでお湯を沸かすんですが、氷点下だとすぐ冷めてしまいます。ちょっと水にふれただけで手がものすごく痛みます」とテイラーさん。「焼けつくような痛みと同時に、ハンマーで殴られた感じがして、いったん痛むとなかなか引きません。外に出ただけで手が真っ赤に腫れあがって痛むので、ベッドにうずくまって泣いていることも1度ではありません」

ツインサイズのマットレスの足元の小さなテーブルに乗っているのは、緑色のキャンプ用小型コンロ。彼女はこれで調理と64平方フィートの住空間の暖房をまかなっている。ベッドの枕元にはプラスチックの収納棚が並んでいる。「こういう風に並べると中央に空間ができるので、折り畳み椅子を置いて座ったり、立って服を着替えたり、店で買ってきた食料品を置いたりしています」とテイラーさんは説明した。

以前野宿していた場所で昨年の記録的な暴風雪――テキサスでは少なくとも246人が死亡――を乗り切ったテイラーさんは、2月初めに大型の冬の嵐が迫ることを知り、準備を進めた。壁替わりの防水シートを補強し、フレームのポールをしっかり地面に打ち付けた。

今回テイラーさんがとくに心配しているのがコンロ用のプロパンガスの調達だ。「停電はそんなに困りませんが、暖房がつかなくなれば、みなプロパンガスを買いに走りますからね」と、41歳のテイラーさんはローリングストーン誌に語った。「みな」とは住む家がある人たちのことだ。「私たちが抱える一番大きな問題のひとつです。みなが緊急事態に備えて買いだめすると、私たちが日々頼りにしている日用品が手に入らなくなってしまうんです」

幸い2022年の嵐は、2021年の時と比べればずっと被害は少なくて済んだ。テイラーさんの小屋の近くにあるヒューストンの店舗では何週間もプロパンガスが品切れ状態になることもなく、数日のうちに再入荷された。「おかげでずっと楽に暖かく過ごせました」と彼女は説明した。「ほとんどの間ずっと中にこもって、扉を全く開けないようにしていました」

【写真】ウェンディ・テイラーさんの仮設小屋(2021年2月撮影)

Translated by Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE