BTSが描いた「未来」の姿 米ローリングストーン誌カバーストーリー完全翻訳版

根底にあるテーマ

分析心理学に基づいたアルバムのリリースサイクル、冥王星の惑星としての地位の喪失をロマンチックなメタファーとして用いた曲「134340」、迷宮のように複雑な単一のストーリーラインを紡いでいくミュージックビデオの数々など、深淵なテーマの探求はBTSの個性のひとつとなっている。ステージにおける曲間のMCでも、深いテーマに言及することが少なくない。「僕たちは誰もが、心の中に宇宙を有しています」。アリーナを埋め尽くしたファンに向かって、RMはそう言った。「毎日仕事に出かけていく僕の父、不動産業者の母、まだ幼い妹、路上で見かける野良犬や野良猫、さらには道端に転がる石にさえも、それと同じことが言えるのです。しかし、この世を去る瞬間までそれに気づかない人々もいます」(彼が共同作曲者としてクレジットされているBTSの2019年作「Mikrokosmos」では、類似するテーマが取り上げられている)

ステージからファンに語りかける際に、メンバーが涙を流すことは決して珍しくない。メイクや玉虫色のヘアも含め、古めいた男らしさの定義を否定することはBTSの本能だと言っていい。「男らしさというのは、今や時代遅れのコンセプトです」。RMはそう話す。「僕たちはそれを破壊しようとしているわけではありません。しかし、自分たちがポジティブなインパクトを生んでいるとしたら、とてもうれしく思います。僕たちは今、そういったレッテルや制限が不要な時代に生きているのですから」

「No More Dream」や「N.O.」などに見られるように、初期のBTSは学校や雇用市場での継続的なプレッシャーや他人との比較など、韓国の若者たちが抱えるフラストレーションをストレートに表現していた(90年代に同様のテーマを掲げていたK-POPの先駆者ソテジワアイドゥルは、当時のメインストリームだったアメリカのヒップホップやR&Bをベースにしていたという点においても、BTSの祖先にあたるような存在だ。彼らの1stシングルは、パブリック・エネミーの「Bring The Noise」をサンプリングしていた)。BTSは初期に発していたそういったメッセージと、より最近の曲の歌詞に見られるアイデンティティや自己愛、メンタルヘルス等のテーマが世界共通であり、自分たちがその代弁者になり得ることを自覚するようになった。そして実際に、彼らは国際連合総会の場で二度にわたってスピーチを行っている。


BTS, photographed in Seoul on April 6th, 2021
Photograph by Hong Jang Hyun for Rolling Stone. V’s coat and top by Fendi; pants by Lemaire. Suga’s shirt and pants by Dior Men. Jin’s jacket, top, and pants by Dior Men. Jungkook’s coat, top, and pants by Fendi. RM’s shirt, pants, and bracelet by Fendi. Jimin’s shirt and necklace by Louis Vuitton. J-Hope’s coat and pants by Fendi; ring by FOTL; necklace by Wilhelmina Garcia.


「そういったメッセージを持つ曲を書いた時、当然ながら、僕たちはアメリカや他の国の教育制度などを意識してはいませんでした」。RMはそう話す。「当時、僕たちはみんな10代でした。学校という場の不条理や、ティーンエイジャーに特有の不安や恐怖など僕たちが実際に感じたり経験したりしたことを歌にしていました。しかし、若者のそういった考えや感情に国境はなく、アメリカをはじめとする欧米諸国の人々も、韓国で暮らす僕たちと同じように感じていたんです」

BTSの正式名称はBangtan Sonyeondan(防弾少年団)であり、その意味を大まかに説明すると「魂のレベルで結びついた若者たちの友人」となる(彼らは後に、BTSが「Beyond the Scene」の頭文字でもあることを明言した)。「彼らを偶像にはしたくありませんでした」。シヒョクは以前にそう語っている。「BTSはファンにとって、親友のような存在であるべきだと思っていました」

去年の12月、パンデミックに支配された1年に対するポップミュージックからの決定的回答というべき切ないバラード、「Life Goes On」でBTSは再びアメリカのチャートの頂点に立った。しかし、歌詞がほぼ全編韓国語だったため、同曲がアメリカのラジオ局で流れる機会は皆無に等しかった。チャートアクションはストリーミング回数とダウンロード販売に支えられており、同曲に対するニーズの高さに疑いの余地はなかったが、各ラジオ局の態度は頑なだった。それでもRMは、その壁が崩れる時がやって来ると信じている。「心で感じてもらえたら、彼らの考えは変わると思うんです」。彼はそう話す。「壁は確かに崩れつつあり、止まることはありません」

BTSは5月21日に、「Dynamite」に続く全編英語詞のシングル「Butter」を発表する。エンターテインメント志向の強かった「Dynamite」と同様に、「Butter」にも重みのあるメッセージ性は見られない。ブルーノ・マーズにも通じるレトロなタッチに、ジャム&ルイスを思わせるシンセと“バターのような滑らかさ”、そして“スーパースターとしての輝き”を持った同曲は、ピュアでエネルギーに満ちたダンスポップだ。「すごくパワフルな曲になりました」。RMはそう話す。「とても夏っぽくて、ダイナミックなパフォーマンスが魅力です」。発表を控えているのは同曲だけではない。過去にBTSとタッグを組んだ複数の欧米のソングライターたちは現在、彼らと新曲を制作中だという。

>>関連記事:ARMY必読「BTSスペシャルムック(2020年発行)」日本版の表紙とポスター画像が解禁

Translated by Masaaki Yoshida

タグ:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE