BTSが描いた「未来」の姿 米ローリングストーン誌カバーストーリー完全翻訳版

音楽性の秘密

BTSは一流の制作陣を迎えることで、従来のK-POPアクトだけでなく、売れっ子ソングライターたちの独壇場となっているアメリカのポップスとも一線を画してきた(最近ではARMYと呼ばれる彼らのファンの間で、BTSがK-POPなのかどうかという議論が白熱しており、その多くは彼らがその枠組みを超越していると主張している)。「彼らはオーガニックでユニークな存在だ」。BTSのファンであり、深夜のトーク番組の司会を務めるジェームズ・コーデンは、2017年以来彼らを複数回番組に招いている。「彼らは機械の一部だという感じがしない。彼ら自体がマシーンだからだ」

RMとSUGAは何年も前から楽曲制作を続けており、SUGAは他のアーティストの楽曲にも数多くクレジットされている。彼らが手がけた曲を除けば、BTSの楽曲のプロダクションと作曲の大半はシヒョクと、Big Hitの専属プロデューサーおよびソングライター陣とのコラボレーションを基本としていた。2017年頃からは欧米のソングライターとプロデューサーを起用する機会が増えたが、彼らもあくまでチームの一員に過ぎない。

プロデューサー勢を束ねるPdoggは、世界中に散らばるクリエイターたちの作品の中から選りすぐりのメロディとセクションを使う場合が多い。「送った曲に対して、『この部分とこの部分が気に入った』みたいなフィードバックが返ってくるんだ」。2020年発表の「Black Swan」「On」に参加したフィリピン系カナダ人プロデューサーのオースト・リゴはそう話す。「そこから『このヴァースを使用して、このセクションは見送る』という具合に進めていく。BTSとのコラボレーションは、一緒にパズルのピースをはめていくような感じなんだ。2日間とかで完成するようなものじゃなくてね。数カ月かけて、修正を6〜7回繰り返す」

イギリスを拠点とするプロデューサーのデヴィッド・スチュワート(ユーリズミックスのメンバーではない)と、彼のクリエイティブパートナーで同じく英国人のジェシカ・アゴンバーが手がけた「Dynamite」は例外だ。HYBEはBTSが全編英語詞のシングルを制作中であることを事前に公表した上で、BTSと共に複数の候補の中から同曲を選んだ。「BTSが予定通りにツアーに出ていれば、『Dynamite』がリリースされることはなかったでしょう」。シヒョクはそう話す。「あのプロジェクトを選んだのは、パンデミックがもたらした状況に対する反動としてムードを変えるためでした。BTSに合っていると感じたし、あのトレンディな雰囲気には英語詞の方がフィットしたんです」

パンデミックによる規制下でも交流できる「安全圏」をメンバーたちで形成したBTSは、昨年の大半をスタジオでの作業に費やした。

「Dynamite」をシングルとして発表した後、11月には彼らのディスコグラフィーにおいて最もメロウかつ洗練されたアルバムであり、「Life Goes On」を収録した『Be』をリリースした。それでも、2020年は彼らが訓練生としてBig Hitに迎えられて以来、最もオフの日が多かった1年となった。何年もの間、彼らは苦笑いを浮かべながら睡眠が足りていないとぼやいていたが、ようやく身体をしっかりと休めることができた去年は自分を見つめ直すことができたと語っている。口にこそ出さなかったものの、訓練生時代に配達員のアルバイトをしていた頃から肩の痛みに悩まされていたというSUGAは、昨年手術を受けたという。今ではすっかりよくなったというが、SUGAはこう話す。「ステージでのパフォーマンスで、十分に腕を上げられない時期もありました」



Translated by Masaaki Yoshida

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