フランツ・フェルディナンドが世界を制した本当の理由 メンバーが結成20年を総括

デビューアルバム大成功の裏側
「北ヨーロッパの規則性に魅力を感じた」

―フランツを紹介する時に「インディ・ギター・バンドとダンス・ミュージックを融合した」と、よく言われますが。そうしたアプローチは、当時どの程度意識していましたか? 直感的なもの、それとも明確に「狙った」もの?

アレックス:どっちもだね。自分が何が好きかは直感でわかっていた。他のメンバーもそう。みんな音楽の好みが近かったし。でも、それとは別に、どう表現するか、意識的に決めた部分もある。今でも覚えているんだけど、かなり初期の頃にニックと「Michael」について議論したことがあった。あの曲には「ダダダ・ダダダ・ダダダ」というギターのリフがあるんだけど、それに対して彼が「スウィング(揺れ)がない」と言ったんだ。「ブルースっぽく、もっと横揺れがないと」ってね。でもそれに対して僕は「駄目だ。その手の音楽はやりたくない」とはっきり言った。それはブリットポップや、アメリカのロックに憧れてる連中にやらせればいいと思っていたから。僕としては、意図的にギターを反復するシンセのように弾きたかった。クラブで聴くようなダンス・ミュージックはどれも、ビートに合わせて反復している。無機質な、北ヨーロッパの規則性に魅力を感じた。そこに強く拘ったんだ。



―1stアルバム『Franz Ferdinand』(2004年)のプロデュースをトーレ・ヨハンソンに委ねたポイントは? 彼はヴィンテージ・サウンドを今日的に聴かせるのがうまい人ですが。

アレックス:バンドのサウンドを決めた時と同じで、アメリカ的な音にはしたくなかったし、いわゆるUKサウンドにもしたくなかった。ありがちなアメリカの大物プロデューサーを迎えたくなかったんだ。ホワイト・ストライプスやストロークス、インターポールといったアメリカのバンドはどれも素晴らしい音を鳴らしてたけど、彼らとは違う独自のサウンドにしたかった。過去10年の間にUKから出てきたサウンドに寄せるのも嫌だった……例えばスティーヴン・ストリートといったインディのプロデューサーとかを呼ぶとかね。彼らは最高のプロデューサーだけど、僕としては違うことがしたかった。

トーレが手掛けた作品には、無機質な北欧のサウンドがある。君の言うように、初期のカーディガンズの作品には美しいレトロ・サウンドを感じるけど、僕が魅力を感じたのはそこじゃない。彼らのアルバム『Gran Turismo』(1998年)がお気に入りだ。バンドの生々しさは健在だけど、無機質で、モダンで、ミニマリズムもあった。特に「My Favourite Game」のサウンドが気に入っている。当時出回っていた音楽のどれとも違うサウンドだった。



―初期のフランツは、フレンチ・エレクトロ勢や、DFAレコード周辺のアーティストとの交流を取り上げられることが多かったですよね。彼らとはどんな風に知り合って仲良くなっていったのでしょうか?

アレックス:ラプチャーとツアーしたよね。ボブ、覚えている?

ボブ:覚えているよ。2004年だったかな。

アレックス:2004年初頭だね。それで彼らと仲良くなって……。フェスやライブでジェイムス・マーフィーとばったり会うことも何度かあったよね。

ボブ:彼は東京での僕らのライブを見に来てくれたよね、確か。2005年か2006年か。武道館のライブだったんじゃないかな。たまたま日本にいるっていうんで。武道館の楽屋で彼と話したと思う。あとツアー中も何度か偶然会うことがあった。

アレックス:お互い、相手がやってることに興味を持っていたんじゃないかな。彼らのシーンも、僕たちと同じようなものから刺激を受けていたんだと思う。ライブ演奏するダンス・ミュージック、という意味でね。あと、グラスゴーにあるOptimoというクラブともお互い繋がりがあった。彼らの音楽を最初に聴いたのもOptimo絡みだったと思う。LCDサウンドシステムの「Losing My Edge」はあそこで聴いたのが最初かな。面白い音楽があっちからも出てきたなと思った。




―「Take Me Out」は、フランツがどういうバンドなのかを知らしめるうえで、とてもわかりやすい曲になったと思います。あの曲はどのように作ったんでしょう。前半と後半をバラバラに書いて、つないで1曲にしたんでしょうか?

アレックス:バラバラに書いたわけじゃなくて、もともとヴァースとサビがある構成だったんだけど、ヴァースとサビとで、それぞれに合うテンポが違ったんだ。つまり、サビのテンポに合わせると、ヴァースが遅くなり過ぎて、逆もしかり、という。で、普通にヴァースとサビを交互に繰り返す、従来の曲構成で演奏すると、ライブで必ず毎回どちらかがおかしく聴こえてしまうんだ。そこで、ヴァースを全部頭に持ってきて、全部歌ってから、テンポを落としてサビを歌うという構成に変えた。

あと、ヒット(ジャッ、ジャッ、ジャッと止めるフレーズの部分)も入れた。というのも、僕たちの音楽にはユーモアも常にあって、内輪ネタみたいなものを入れたりする。この曲のヒットの部分は僕たちにとってちょっとしたジョークのようなもので。アメリカで「スポーツ・ロック」ジャンルについて誰かが語っているのをボブがネットで知って、「スポーツ・ロックって何?」ってなったんだ。すぐに連想したのはクイーンとか、(サヴァイヴァーの)「Eye Of The Tiger」あたりだった。だったら「Eye Of The Tiger」のリフみたいな「ジャッ、ジャッ、ジャッ」ってパートを入れたら面白いんじゃないかっていう話になったんだ。クイーンにも多いよね。聞いたところだと、いわゆるシンバル・チョーク(シンバルを叩いた直後につかんで、音を止める奏法)を発明したのはロジャー・テイラーらしいよ。ということで、僕たちも曲にそれを取り入れようっていうことになった。スパークスの曲にも結構あるよね。もしかしたらスパークスから盗んだのかも。いずれにせよ、ジョークのつもりであのパートを入れてみたら、思いのほかいい感じになった(笑)。




―このCROSSBEATという雑誌、アレックスが表紙を飾った2005年の号で、メンバーに前年のベスト・アルバムを訊いてるんですけど。中にはボブもいます。

ボブ:そうだね。持ってるのはフューチャーヘッズのアルバム?



―そうです。アレックスもボブも、この年一番良かったアルバムとして彼らの1stアルバム『The Futureheads』を挙げてるんですが。この頃、彼ら以外にもフランツと近い音楽性のバンドがいくつも出てきたのに、結局あなた方しかシーンの最前線に残っていないですよね。どうしてフランツだけが生き残れたんだと思います?

アレックス:フューチャーヘッズは今も最高のバンドだし、今でも作品を出し続けている。最新作を出したのはいつだったかな。2年くらい前だっけ?

ボブ:2、3年前だね(2019年)。最近もサンダーランドでライブをやるっていうのを目にしたよ。

アレックス:だよね。僕たちがなぜ生き残れたかという質問だけど、それはまだ音楽を作ることに刺激を感じてるからだ。今でもまだワクワクする。まだアイディアも出てくるし。新しい曲、「Curious」と「Billie Goodbye」を聴けばわかるよ。このバンドには、まだやりたい音楽があるって。もし音楽を作ることがつまらなくなって、アイディアも尽きてしまったら、あるいは人に興味を持ってもらえなくなったら、その時はやめるだろう。でも、今のところは、続ける方がいいみたいだ。

Translated by Yuriko Banno

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