フランツ・フェルディナンドが世界を制した本当の理由 メンバーが結成20年を総括

未来を見据えたフランツの姿勢
「常に新しいことをやろうとしてきた」


―今回ベスト盤に収録された新曲「Curious」「Billie Goodbye」が、それぞれどんな風にできたのか教えてもらえますか?

アレックス:2曲ともロックダウン中に書いた曲で、新しいドラマーのオードリーが初めてレコーディングに参加している。彼女と初めて一緒に演奏した曲が「Curious」で、一緒にプレイしてみて、「これはいい」と思ったのを覚えている。彼女をバンドに迎えるのはけっこう大きな出来事だった。これまでもポールがライブに出られない時に別のドラマーを入れて演奏したことはあったんだけど、レコーディングとなるとまた話は別で。でも、彼女とは息もぴったりで、良かったよ。

「Curious」は、いくつかのアイディアから生まれた曲で、一つは、映画とかでよくある、死に際に走馬灯のように、人生の様々な情景が脳裏に蘇るのを逆向きにして、恋愛関係に当てはめたらどうかと思ったんだ。恋に落ちた瞬間から、その後に起きることが早送りで見える、という。恋に落ちた時の情熱が、次第に繰り返される毎日の中でマンネリ化していく。「それでも僕のことを愛し続けてくれるのか」という好奇心を歌っている。音楽的には幾つかやろうとしたことがあった。数年前に記事で読んだんだけど、ある救急医療の現場で心臓マッサージをするのにビージーズの「Staying Alive」をかけるというんだ。どうやら、あの曲のBPMが人間の心拍運動に最も合ってるらしい。凄い話だなと思ったけど、俄に信じがたいとも思って、「Staying Alive」のBPMをプログラムを使ってチェックしてみたんだ。そしたら、かなり変わったBPMで103.9とかだった。凄く中途半端な数字なんだよ。で、「Staying Alive」と全く同じBPMの曲を作ろうと思った(笑)。それこそ好奇心から。あまりにあり得ない話だから、逆に興味が沸いちゃって。




アレックス:もう1曲の「Billie Goodbye」の方も、ありがちなものの逆をいく発想だ。恋愛関係に別れを告げる歌。しかも前向きな別れ。すぐに思いつくのはレナード・コーエンの「So Long Marianne」だ。“So long Marianne, It’s time we began to laugh and cry, and cry and laugh about it all again”……プラトニックな関係性についての歌を書きたかったんだと思う。友情だね。友情について歌った歌はあまりない。でも、友情こそが人の本質を明らかにする。でも、全ての友情が永遠に続くわけじゃない。前向きな形で袂を分かつのがいい時もある。音楽的には、この2曲はバンドの二つの面がよく表れていると思う。「Billie Goodbye」はどちらかというと「Darts Of Pleasure」や「Do you Want To」といったロック調で、「Curious」の方は踊れる曲調だ。




―新曲からも、未来を見据えた斬新な作品を生み出そうとするあなたの基本姿勢が変わっていないことが実感できました。そういう姿勢は、デビューした頃からずっと変わらないですね。

アレックス:そうだね。僕に最初に音楽を作りたいと思わせてくれたアーティストたちもみんなそうだった。わかりやすいところだと、ビートルズとかボウイとか、スパークスもそう。彼らのどこに惹かれたかというと、彼らは自分たちらしさをわかっていて、なおかつ、常に新しいことをやろうとしてきた。実際、今回のアルバムで過去の曲を全部聴き返してみると、僕らは本当にいろんな方向に向かってたし、いろんなサウンドを試してきたのがわかる一方で、どの曲も紛れもなくフランツだって再確認した。いつだって、それを目指してきたんだ。

―最後に、ふたりが最近気に入って聴いているレコードを教えてもらえますか? 新しい人でも、最近発見した古いものでも構いません。

アレックス:個人的には、この作品を推さないわけにはいかない(LPのジャケットを掲げる)。

―ああ、ロス・ビッチョス! あなたはそのアルバム(『Let The Festivities Begin!』)をプロデュースして、ブズーキをはじめ何種類もの楽器を弾いてましたよね。

アレックス:そうそう、ブズーキも弾かせてもらった。楽しかったよ。彼女たちは人としても素晴らしいし、バンドとしても最高だ。世界中の人たちに彼女たちの音楽を聴いてもらうのが楽しみだ。ボブは?

ボブ:僕はキャスリン・ジョセフというグラスゴーのアーティストを推させてもらうよ。ロックダウン中に物凄く聴いた。彼女のことはその前から知っていたんだけど、あまりちゃんと聴いたことがなかった。人生で一番深く、暗く、寂しい冬を過ごすまでは。『From When I Wake The Want Is』というアルバムをモグワイのレーベル、ロック・アクションから出しているんだけど、ただただ美しい。メロディーは凄く繊細なんだけど、力強くもある。この2年間、聴きまくった作品だ。




―アレックスはブズーキなどギリシャの楽器を弾きますが、ギリシャ出身のお父さんから教わった音楽はあなたのルーツにあるのでしょうか。

アレックス:子供のころ、たくさん接した音楽だ。祖父は1904年生まれなんだけど、ピレウスの街のニカイアというところで医者をやっていた。そこは、小アジア(アナトリア半島)やトルコからの移民が多く、レベティコ(ギリシャのブルースとも形容される大衆音楽)をみんな聴いていた。僕も大好きな音楽だ。祖父の患者の中にはミュージシャンもいて、その中にマルコス・ヴァンヴァカリス(レベティコの代表的なコンポーザーで、歌手、ブズーキ奏者)もいた。だから祖父も父もたくさんそういう歌を歌ってくれて、子供の頃から馴染みがあった。特に意識して聴いたというより、僕の中に自然と流れているものだよ。




フランツ・フェルディナンド
『Hits To The Head』
発売中
詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12191


フランツ・フェルディナンド来日公演
サポートアクト:DYGL
2022年11月28日(月)東京ガーデンシアター
2022年11月30日(水)大阪・なんばHatch
特設ページ:https://smash-jpn.com/ff2022/



【チケットプレゼント】
フランツ・フェルディナンド来日公演

東京・大阪の各公演に、Rolling Stone Japan読者3組6名様ずつをご招待します。

【応募方法】
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2022年11月7日(月)
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Translated by Yuriko Banno

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