BTSが人々の心や社会にもたらした変化

「Rolling Stone India Collectors Edition: The Ultimate Guide to BTS 日本版」より

Rolling Stoneインド版が2020年に発行した「BTSスペシャルムック」の日本語完全翻訳版「Rolling Stone India Collectors Edition: The Ultimate Guide to BTS 日本版」が完成。同書の校正を担当したライター・翻訳家の桑畑優香がその内容を解説。

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ARMYだからこそ語れるアーティスト論

「人生で一番必要としている時にBTSと出会った」という言葉を多くの人から聞く。でも、実際にはその逆なのではないだろうか。彼らがあなたを見つけてくれるのだ」
「Rolling Stone India Collectors Edition: The Ultimate Guide to BTS 日本版」の原稿を読みながら、このような文で始まるコラムに引き込まれた。タイトルは、「BTSが私の人生を救ってくれた」。人間関係が崩壊し、どん底にあった一人の女性が、YouTubeで偶然目にした「RUN」のMVに心惹かれ、恐れや痛みを抱くのは人間であることの一部だと気づく。自らの体験を鮮やかに言語化し、躍動感に満ちた文章で綴ったのは、リディ・チャクラボーティ。インド版ローリングストーン誌のシニアライター兼プロデューサーだ。

自らもARMYであるチャクラボーティがキュレーションした本書は、いわばARMYによるARMYのための一冊丸ごと(!)BTSムック。多くのBTS関連本が日本でも出版されるなかで、本書について特筆すべき一つはHYBEから提供された画像だ。ミュージックビデオや「Bon Voyage」の名場面。『2 COOL 4 SKOOL』 (2013年)で デビューした当時から『BE』(2020年)に至るまでのディスコグラフィを紹介するページに大きく掲載されているアルバムコンセプトフォトは、BTSの歩みをビジュアルとともに刻む年代記として保存版の価値がある。

もう一つ着目すべきは、計13万文字を超える(文庫本一冊に匹敵!)ボリュームたっぷりの記事。映像プロデューサーが読み解くシネマティックユニバースや、WEBコンテンツのマーケティング経験者が解説するBTSのデジタルコンテンツ活用術、ジャーナリストが説くBTS通して見えるジェンダーetc. 専門家たち(みなさんARMY)がそれぞれの立場から切り込むBTS論は深く鋭く、新たな気づきを与えてくれる。

そしてこのムックのクライマックスといえば、もちろんBTSへの独占インタビューだろう。4つの記事のインタビュアーはチャクラボーティ。2017年、K-POP史上最大のカムバックと称される『LOVE YOURSELF承‘HER’』のリリース直前に明かした、ソングライティングのプロセスや、ビルボードHot100への野心。RMが明かすBTSのリリシズムがメンタルヘルスや政治状況などのタブーに挑む理由。そして2020年、「Dynamite」が世界的ヒットを記録した後に語ったARMYへの感謝と「成功」の意味、パンデミックが楽曲制作与えた影響について。そこには、「BTSのメンバーとともに今回のプロジェクトに取り組んだ2カ月間、プロフェッショナルとしての彼らについて多くを学んだ」というチャクラボーティの、「仕事の正確さとタイミング。細部へのこだわり。技能とチームワークに対するコミットメントこそ、彼らが地球上の他のアーティストと一線を画す理由ではないか」という貴重な感想も記されている。

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