イントロの長さに隠れた意図、トーキング・ヘッズの楽曲などから鳥居真道が徹底考察

 
テンポが上がるとテンションがバク上げするのと同様に、音量が上がってもテンションがバク上げするものです。この手法をもっともわかりやすいシンプルな形で提示したバンドがニルヴァーナであることはいうまでもありません。もちろんその先達にはピクシーズがいます。本人たちもピクシーズの「ラウド・クワイエット・ライド」フォーミュラを真似たと明らかにしています。ただし、ディストーションペダルを使用したギターによる音の壁の分厚さおよび、ドラムのやかましさ、ベースのゴリゴリ感という面でいえば、やはりニルヴァーナのほうがわかりやすいと思います。
 
私が海外のロックを聴くようになったのは、2000年前後のことでした。その頃よく聴いていたのは、当時でいうラウド系と呼ばれるようなバンドでした。たとえば、リンプ・ビズキット、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、コーン、インキュバス、システム・オブ・ア・ダウンなどなど。今改めて代表曲を聴いてみるとイントロが長いことに気が付きました。なぜ長いのか。それはおそらく彼らがニルヴァーナとは違った形で「ラウド・クワイエット・ラウド」フォーミュラを採用しているからでしょう。もちろんニルヴァーナの影響もあるのでしょうが、どちらかというとメタリカからの影響のほうが強いのではないかとみています。


 
たとえば、コーンのデビューアルバム『Korn』の一曲目「Blind」などはラウドなセクションに至るまでに1分ほどかけています。ボーカルのジョナサン・デイヴィスが”Are you ready”と問いかけて来る頃には完全に体が温まっている状態です。
 
このイントロはラウドなセクションから逆算して徐々にバンド全体のアンサンブルが完成されていくところを我々リスナーに披露しています。ド頭はライドシンバルの刻みのみというミニマルさ。途中でシンバルのカップ(中心のぽこっと膨らんでいる箇所)を叩いて音色を変えています。ここはマンキーが演奏するギターのリズムと重なる部分です。ところで、「Blind」の音源ですがステレオが左右逆のほうがしっくり来ると思うのですが、どうなのでしょう。ちなみにMVの音源はステレオの左右が逆になっています……。
 
ラウドなセクションにテンションをバク上げさせるには、やはりクワイエットなセクションにある程度時間をかける必要があります。それゆえイントロ自体も自ずと長くなるわけです。キング・クリムゾンの「21世紀のスキッツォイド・マン」も、冒頭30秒にわたる微かなノイズがあってこそ、あの衝撃的なイントロが活きるというものでしょう。あるいはディス・ヒートの「Testcard (Blue)」が「Horizontal Hold」に果たす役割を考えてみても良いかもしれない。

Rolling Stone Japan 編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE