イントロの長さに隠れた意図、トーキング・ヘッズの楽曲などから鳥居真道が徹底考察

 
ロック・バンドは「一人ひとり、みんな主役だよ」的なマインドがあるので、パートに序列がなく、皆が横並びという感覚が強いです。各メンバーのキャラが立っているほど良いバンドとされることがあります。ボーカリストはフロントマンではあるけれど、権力を独り占めしているわけではありません。ミック・ジャガー、スティーヴン・タイラー、ロバート・プラント、フレディ・マーキュリー、アクセル・ローズ、アンソニー・キーディスといったレジェンド級のボーカリストが在籍したバンドにもイントロの長い曲はたくさんあります。しかし、彼らがステージ上で長いイントロに不服そうにしているところもあまりイメージがわきません。ステージに立つミュージシャンは、パフォーマーであると同時にオーディエンスの代表でもあるので、長いイントロの演奏中に退屈そうに過ごしたりしようものなら、その振る舞いがオーディエンスにも伝播し、盛り下げることになるでしょう。そうした諸々を含め、ロックはいくらイントロが長かろうとことさら問題になったりしない音楽なのかもしれません。
 
学生の頃にサークル内でブラック・サバスのコピーバンドを組んだことがあります。オジー・オズボーン役の先輩が「手持ち無沙汰でつらい」とこぼしていたのをよく覚えています。そりゃコウモリも噛みたくなるわな、とのことです。


鳥居真道



1987年生まれ。「トリプルファイヤー」のギタリストで、バンドの多くの楽曲で作曲を手がける。バンドでの活動に加え、他アーティストのレコーディングやライブへの参加および楽曲提供、リミックス、選曲/DJ、音楽メディアへの寄稿、トークイベントへの出演も。
Twitter : 
@mushitoka / @TRIPLE_FIRE

◾️バックナンバー
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Vol.2「高速道路のジャンクションのような構造、鳥居真道がファンクの金字塔を解き明かす」
Vol.3「細野晴臣「CHOO-CHOOガタゴト」はおっちゃんのリズム前哨戦? 鳥居真道が徹底分析」
Vol.4「ファンクはプレーヤー間のスリリングなやり取り? ヴルフペックを鳥居真道が解き明かす」
Vol.5「Jingo「Fever」のキモ気持ち良いリズムの仕組みを、鳥居真道が徹底解剖」
Vol.6「ファンクとは異なる、句読点のないアフロ・ビートの躍動感? 鳥居真道が徹底解剖」
Vol.7「鳥居真道の徹底考察、官能性を再定義したデヴィッド・T・ウォーカーのセンシュアルなギター
Vol.8 「ハネるリズムとは? カーペンターズの名曲を鳥居真道が徹底解剖
Vol.9「1960年代のアメリカン・ポップスのリズムに微かなラテンの残り香、鳥居真道が徹底研究」
Vol.10「リズムが元来有する躍動感を表現する"ちんまりグルーヴ" 鳥居真道が徹底考察」
Vol.11「演奏の「遊び」を楽しむヴルフペック 「Cory Wong」徹底考察」
Vol.12 クラフトワーク「電卓」から発見したJBのファンク 鳥居真道が徹底考察
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Vol.15 音楽がもたらす享楽とは何か? 鳥居真道がJBに感じる「ブロウ・ユア・マインド感覚」
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Vol.18 裏拍と表拍が織りなす奇っ怪なリズム、ルーファス代表曲を鳥居真道が徹底考察
Vol.19 DAWと人による奇跡的なアンサンブル 鳥居真道が徹底考察
Vol.20 ロス・ビッチョスが持つクンビアとロックのフレンドリーな関係 鳥居真道が考察
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Vol.23 大滝詠一『NIAGARA MOON』のニューオーリンズ解釈 鳥居直道が徹底考察
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Vol.26 ホイットニー「カントリーロード」カバーに感じる匠のドラム、鳥居真道が徹底考察
Vol.27 チャーリー・ワッツから感じるロックンロールのリズムの成り立ち、鳥居真道が徹底考察
Vol.28 手拍子のリズムパターン、クイーンやスライの名曲から鳥居真道が徹底考察
Vol.29 ビートルズ「Let It Be」の心地よいグルーヴ、鳥居真道が徹底考察
Vol.30 ポール・マッカトニーのベースプレイが生み出すグルーヴ、鳥居真道が徹底考察
Vol.31 音楽における無音の効果的テクニック、シルク・ソニックなどの名曲から鳥居真道が徹底考察
Vol.32 ギターソロ完コピをめぐる複雑グルーヴ、イーグルスの王道曲から鳥居真道が徹底考察

Rolling Stone Japan 編集部

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