中島みゆきのラスト・ツアー、瀬尾一三と振り返る

一期一会 / 中島みゆき

田家:なぜリハーサルから録っていたのか、そしてなぜそれを言わなかったのかはこの後追々お訊きしていこうと思うのですが、ライヴの1曲目がこの「一期一会」でありました。イントロいいですねー。

瀬尾:ライヴの「結果オーライ」をやると決めたときから、この曲は決まっていたので。

田家:この曲で始めたいと。

瀬尾:所謂、ツアーとしてみなさんとお会いするのも一期一会ということで、スタートの曲は決まっていました。「結果オーライ」ツアーは2019年には決まっていたこと。当然2018年の終わりには決まってないと、会場も押さえられませんからね。僕だけにはツアータイトルも教えてくれて、2018年の暮れには知ってました。

田家:そのときには「一期一会」が1曲目にあったんだ。ライヴ用のアレンジということで、ライヴのためにこうしなければいけないみたいなところもあっったんですか?

瀬尾:まあまあ、それは臨機応変で(笑)。

田家:イントロの長さもちゃんとライヴのオープニングということで。

瀬尾:そうですね。みなさんがコンサートの始まりを感じてくれるようにと、本人が出てきて一息ついて歌えるぐらいの長さにしなきゃダメなので。

田家:その長さに関しては「夜会」でも散々おやりになっているんでしょうし。

瀬尾:本当にそれで随分叩き上げられましたね。「夜会」も含めて。

田家:初日は新宿文化センターで始まったときは、どんなふうに感じていらっしゃいました?

瀬尾:ツアー初日だったので、どちらかと言うと上手くいってくれと思うことしかなくて。まだゲネプロも1回ぐらいしかやっていなかったので、ドキドキ感の方がすごく強かった。本人、ミュージシャン、舞台装置含め、みんなミスしないようにということばかりをずっと考えていました。お客さんがどんな反応なのか、そこまで自分の中では全く余裕がなくて。久々に焦った感じがしてましたけどね。

田家: 2018年にラストツアーというのがみゆきさんの口から出てきたときにはどう思われたんですか?

瀬尾:彼女はその頃から主要都市中心に回ってましたけれども、移動が多かった。本人的に体力的なこともあるし、移動って結構大変なんですよ。泊まっているところがホテルだと、全部荷物を持っていかなければいけない。特に中島さんは荷物が多くて、大変なので(笑)。

田家:引っ越ししてるみたいな(笑)。

瀬尾:ほとんど引っ越しに近い。彼女は人の手を借りないので、セットしたり片したりするのは全部自分でやるので、そういうのにも疲れてきますよね。だから、これでラスト・ツアーというのは、来るものが来たんだなと思いましたけどね。

田家:やっぱりいつかそういうときが来るだろうと思っていたんですね。選曲もある程度あったんですか?

瀬尾:選曲は2019年に入ってからです。リハーサルが秋口の終わりぐらいから始まったので、僕は夏ぐらいからアレンジをし始めないとダメで、その前に2人で会って曲を詰めていきました。

田家:そのときから実際に歌われた21曲だったんですか?

瀬尾:彼女の中での曲が出てきたのとこちら側からの意見ですけども、まだ自分で歌っていないので、自分の中のストーリーとして曲順を作ったとしても、それを実際に歌ってみたときに途中で果ててしまったりするかもしれない。それは僕も考えながら、「こことここはきついんじゃないの?」と話したりして、詰めていきます。

田家:そのときにキャリアの集大成なんだということは思われてました?

瀬尾:あくまで彼女はラスト・ツアーということは考えていたので、なるべくみなさんに曲目を多く聴いてほしい気持ちがありました。1988年から彼女と一緒に仕事をし始めたんですけど、その前のヒット曲も入れたいということで、それも含めて選曲しました。

田家:関わる以前の曲は、瀬尾さんはステージでおやりになっていないでしょう。

瀬尾:そうですね。彼女からのリクエストで僕が関与してなかった曲は「オリジナル通りにしてくれ」、「変えないでくれ」と言われました。「イントロとか絶対変えないで、音質も似させてくれ」って言われていて大変でしたね。亡くなったキーボードの小林信吾と相談して、「この音はどうだろう」とかシンセで音を探してもらって。それで「これでどうだ! そっくりだろう」と思いながら昔のオリジナル通りにやってみました。

田家:まさかこの曲がこの順番でという例がいろいろあったのですが、その最たるものが次の2曲であります。「一期一会」で始まって、ツアーの趣旨と「ラスト・コンサートじゃないのよ、ラスト・ツアーなのよ」という話があって、2曲目と3曲目に入ったわけですね。「アザミ嬢のララバイ」と「悪女」続けてどうぞ。ステージでも続けていました。

Rolling Stone Japan 編集部

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