ミッキー吉野70歳記念アルバムをプロデューサー・亀田誠治と語る



田家:アルバムの4曲目「Take a train ride ~ from Swing girls 」。2004年の映画『スウィング・ガールズ』のサウンドトラック。これは思いがけなかったですね。

亀田:ミッキー吉野さんはものすごい数の映画サウンドトラックとか、ドラマの劇伴サウンドトラックを作っているんですよね。

田家:『スウィング・ガールズ』は、東北の田舎の女子高生がビッグバンドを組んで、ジャズを演奏する青春映画で「A列車で行こう」とか「ムーンライト・セレナーデ」とか「Sing,Sing,Sing」とか、スウィング・ジャズのスタンダードも演奏されていました。その間にミッキーさんのオリジナルが流されていて、アカデミー最優秀音楽賞をとっているんでしょ?

亀田:日本のアカデミーをとってますね。だって音楽が素晴らしい。しかもこれ、「Take a train ride」でしょ? 「A列車で行こう」は“Take the ”A“ Train”。これは「a train」なんですよ。「ちゃんと結びついていて粋だなー! なんて素敵なんだろう!」と思いました。

田家:原曲はアコースティックギターですもんね。

亀田:今回、ミッキーさんの作曲家としての側面とピアニストとしての側面をフィーチャーしたくて、ミッキーさんに何曲かピアノの小品をピアノピースとして入れるといいんじゃないかと提案したんです。思いつきで言っているわけではなくて、コロナ禍のはじめの頃にミッキーさんのYou Tubeチャンネルで、ご自身の楽曲を弾いた動画を上げられていた。「君は薔薇より美しい」もあって、それを僕は観ていてミッキー吉野さんのファンキーだったり、ジャジーだったり、クラシックにも根付いていたり、ロックだったりする幅広いピアノプレイをもっとたくさんの人に聴いてもらいたいなと思って、提案したんです。

田家:なんで映画のときはピアノじゃなかったんだろうと思いましたけどね。

亀田:それぐらいピアノアレンジがフィットしてるでしょ?

田家:はい。これはミッキーさんにお聞きしてみようと思いますが、ミッキーさんはバークレーに行かれているわけで、その経験は今のキャリアの中で他の人とは違う何かになっているんでしょうか?

亀田:なっているんだと思います。一緒に作品を1年半かけて作ったやり取りの中で、やっぱり音楽をグローバルな視点から見ているなと感じました。ミッキーさんにとって音楽はジャンルではないんですよ。デューク・エリントンが言っていた、いい音楽と、そうでない音楽しかないという世界基準のような音楽観がある。向こうのミュージシャンと一緒にセッションをして感じ取ったことが、すごく根っこが太い音楽家を作り上げているのではないかと思います。

田家:小品だから凝縮されているものが伝わってくる、そんな曲ですよね。

亀田:そうですね。「連弾っていうイメージにしちゃいましょう」って僕が提案したら、ミッキーさんは誠実だから「これ以上音を出すのは僕の手がもう1本ないと足りないよ」というふうにおっしゃって気にされていたんです。でも、「例えば、曲を作ったときのミッキーさんと、そして今古希を迎えたときのミッキーさんが一緒に連弾しているみたいな感じはどうですか」って提案して。

田家:すごいなあ。

亀田:ミッキー吉野さんも、「じゃあやってみる」とおっしゃってくれて。映画のサウンドトラックで聴いているときとはまた違う楽曲の魅力をミッキーさんのピアノが引き出してくれている気がするんですよね。

田家:それがさっきの「DEAD END ~ LOVE FLOWERS PROPHECY」の後に入ってる選曲の妙でしょうね。

亀田:これはいい流れだと、我ながら思いますね。

Rolling Stone Japan 編集部

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