ミッキー吉野の音楽への情熱と美学、亀田誠治が制作中の影響を語る

ミッキー吉野





田家:アルバムの7曲目「ガンダーラ feat. タケカワユキヒデ」。これも解体と再構築ですね。

亀田:ゴダイゴを代表する曲だと思うので、絶対に収録したかった。でも、どういう形で収録するのがよいのかと考えていく中、今ゴダイゴをリユニオンして一緒にやるというのもありなんですけど、1番種の部分をしっかりと見せるのがいいんじゃないかと思ったんです。そのときにピアノ1本とタケカワさんの歌だけのアレンジにしてみたらこの曲が持っている根源的な部分が見えてくるんじゃないか。もしくはゴダイゴの1番コアな部分が見えてくるんじゃないかと思って、僕からこの形を提案させていただきました。

田家:お2人に提案したんですか?

亀田:はい。はじめはミッキーさんが「途中からは民族楽器、パーカッションとか入ってきた方がいいんじゃないのかな、亀ちゃん」とか、「2人で持つかな」とおっしゃっていて。

田家:「持つかな」って言っていたんですか!

亀田:僕が「できあがってないけど、絶対持ちますから」って断言しました。

田家:タケカワさんは?

亀田:ものすごく喜んでくださいました。ピアノと歌もリモートでのレコーディングなんです。なので、タケカワさんの歌が乗っかることを想像しながらミッキー吉野さんが心を込めてピアノを弾いた。

田家:歌なしで弾いているんですね。うわー!

亀田:そうです! それをタケカワさんが受け取って、ご自身のスタジオで1人で歌って。密室のピアノプレイと密室のボーカルプレイが一緒に合わさった「ガンダーラ」なんです。

田家:ミッキーさんのピアノをお聴きになったとき、亀田さんの中でどういう歌が乗るかは想像されたんですか?

亀田:想像していました。音数が少ない中では原曲のような歌い方ではないだろうなというのと、タケカワさんも50年間のキャリアを積み重ねて現役で歌ってらっしゃるわけなので、今のタケカワさんの最高の歌が引き出せるんじゃないか。ブレスから音の伸ばし、切れ際の瞬間までが見えてくるんじゃないかなと。「ガンダーラ」が持っている曲の哀愁感、奈良橋陽子さんの歌詞が、シンプルな演奏でどれだけ引き立ってくるか、確信を持ってたんです。想像を超えたいいものができたので、この形にしてよかったと思っています。

田家:タケカワさんのコメントが資料に載ってまして、「こんなに何回も歌った曲も珍しいのに、すごく新鮮で気持ちよかった」。短い言葉の中にいろいろな感情がこもっているんだろうなと思いましたけど、彼も意外だったんでしょうね。

亀田:びっくりされてました。「え! 亀田さんからの提案!?」って。ミッキーさんも「楽器足そう」っておっしゃったし、タケカワさんも「その編成でいいの!?」っておっしゃって。でも僕が「絶対大丈夫ですから!」って言ったんです。お2人とも本当に楽しんでやって下さって、ミッキーさんも発見があったとおっしゃっていますし、音楽の普遍性、奇跡を感じました。

田家:これからお聴きになる方もきっといろいろな発見があると思います。ミッキーさんがどんなことを思い浮かべながら、どういう歌を想像しながらお弾きになったのか。タケカワさんが何を考えながら歌われたのか想像しながら聴くと、緊張感がある歌に聴こえますね。

亀田:英詞バージョンに関してはタケカワさんから唯一来たリクエストですね。日本語歌詞もあるんですけど、響きもそうですし、ダイレクトな日本語以上に聴く側が想像のエンジンを始動させることにも繋がって、体の奥まで染み込んでいくような仕上がりになったと思います。僕も何曲かこれまでピアノ1本と歌の楽曲を作ってきましたけど、本当に元の曲が持っているこの力……。

田家:こんなに哀愁ある曲だったのか! という発見でした。

亀田:アレンジャーやサウンドプロデュースという自分の活動もあるんですけど、歳を取るごとにどんどん自分もシンプルになっていくところがあって。削ぎ落としていく美学を大先輩たちのプレイや歌から今回学ばせていただきました。

田家:タケカワさんの声もこんなに悠久を感じさせる声とは思ってませんでした。ゴダイゴはアジア思考があって『西遊記』もそうでしたけど、大陸感をロックバンドで再現しようとした最初のバンドで、その大陸感はこのメロディなんだなと思いました。キャリアを重ねないとできないことかもしれないですね。亀田さんの中でアジア思考はどこかにありましたか?

亀田:J-POPにおける侘び寂びみたいなものは、大半は洋楽から引っ張ってこられているものだと思うんです。アレンジ上であったり、コード理論上であったり。ところが、もっと心の奥底に僕らが本当に持っているのは日本古来の音階であったり、アジアが持っている雄大さ、深淵さ。色の彩度、鮮やかさの違い、アジアの景色みたいなものですよね。僕の音楽はいつも胸キュンとかキラキラしてるって言われちゃうんですけど、実は自分の中でもアジアの部分は大きな面積、体積、容積を持って存在しているんじゃないかなと思います。

田家:それがあったから、ピアノと歌のみの提案に繋がったんでしょうね。

亀田:そうかもしれないですね。

Rolling Stone Japan 編集部

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