ミッキー吉野の音楽への情熱と美学、亀田誠治が制作中の影響を語る

ミッキー吉野





田家:流れているのはアルバムの9曲目です。「Beautiful Name(Piano Piece)」。先週も話に出ました、「ピアノピースを入れたいんだ」というのはこの1曲もそうですね。1979年4月に発売されたシングルで、国際児童年のテーマでした。亀田さんが「日比谷音楽祭」を2019年に行われたとき、この曲でコンサートを締められたんですよね?

亀田:そうなんです。今から50年近く前にこれからの未来に対して、こんなに思慮深く、希望を音楽に乗せたゴダイゴはすごいなと思って。だって、SDGsとかそういう文脈も全くない時代ですよ。まだ更地の時代で、例えばある国では戦争や紛争みたいなものが残っている状況の中で、国際児童年という立ち上がったものに対して、「Beautiful Name」。Every Child has a Beautiful Nameという伝わりやすい言葉でメッセージを打ち出していった素晴らしさを伝えたい。でも、逆にそこからキーワードとなる歌詞を抜いていくことをやってみたくなって、ミッキーさんに提案したんです。「この曲、もしかしたらメッセージは音楽そのものの中にもあるかもしれませんよ」と言って、ピアノピースでやってみましょうという流れになったら、ミッキーさんがファンキーなラグタイムブルース風、ファンキーなアレンジをして下さって。これはTHE ミッキー吉野グルーヴです。ミッキーさんでしかこのグルーヴは出せない。ピアノ1本で演奏してくださって最高の「Beautiful Name」になったと思います。

田家:言葉を外すと決断できる、それがプロデューサーということなんでしょうね。

亀田:曲順とかいろいろ考えていく中でもそういうことがあるんですけど、前に進みながら分かってくることなんです。「亀田さん、はじめから地図を描いて落とし所とか分かってるんでしょ?」とかよく言われるんですけど、大抵の場合はやりながら見えてくるもの、前に進んでいくと見えてくるものがある。もしかして「Beautiful Name」もこのプロジェクトのはじめの頃に手がけていたら、誰かのボーカル入りになったかもしれないんですよ。そのときのベストを尽くしていく中で「最高は絶対終わりの方に待っているから」といつも言うんですけど、それを信じてこの曲を選んだならば、「あ、インストゥルメンタルでいけるんだ」という感じがしました。そこに至るまではミッキーさんのお気持ちもあると思うんですけど、自分自身もコロナ禍、未曾有のいろいろな経験の中、何が大事で何を残していくか、伝えていくかを常に自問自答しているかもしれないと、田家さんとお話ししていて気が付きました。

田家:ゴダイゴはずっと英語でやっていたバンドで、亀田さんもよくご存知ですけど日本のロックの中には日本語派のはっぴいえんどがいて、英語派の内田裕也さんに始まる流れがあって、いつも対立的に考えられたりしていた。ゴダイゴは英語でやりながら海外でも成功して、日本でもポピュラリティを持ったバンドだと思っていて。最後、言葉を外したことで、そこも越えようとされたのかなと思ったりしました。

亀田:そこは意識していなかったけれども、音楽が何を言っているかに集中していくと「Beautiful Name」から1番大事なメッセージの部分の言葉が外れた。そういうことなんじゃないでしょうかね。

田家:アルバムを最初に聴かせていただいたとき、「あ、こんなにいろいろな曲をやっているんだ。こんなにいろいろなバリエーションでアレンジしているんだ」と思ったことがだんだん繋がってきて何回か聴いているうちに、これはきちんとしたメッセージが脈々と流れている、とても骨太な思想的なアルバムだと思ったんです。「ガンダーラ」、「歓びの歌」、「Beautiful Name」はまさにそれを象徴していますよね。

亀田:何十年も音楽を作り続けていて、その間に音楽の聴かれ方、作り方はどんどん進化しているし、新しい素晴らしい才能がどんどん出てきている。その中で砂金のように輝いているものは、砂がこぼれ落ちていったとしても残るんだということを伝えたかったんですよね。

田家:45周年の公式本の中で亀田さんが使われていた音楽の良心という言葉と、うけようとか儲けようとか思ってはあかんのですという言葉がアルバムに流れていますね。

Rolling Stone Japan 編集部

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