ミッキー吉野の音楽への情熱と美学、亀田誠治が制作中の影響を語る



田家:アルバムの10曲目は新曲が入っております。「NEVER GONE feat. 岡村靖幸」。作詞がエルビス・ウッドストック、リリー・フランキーさん、作曲がミッキー吉野さん。ピアノ・ミッキー吉野さん、ドラム・山木秀夫さん、ベース・高水健司さん、ギター・小倉博和さん、ストリングス・金原千恵子さんグループ。そして、アレンジが亀田さんです。

亀田:これは1番はじめに「DEAD END」と一緒に僕のところに届いていた曲で。ゴダイゴのギタリスト・浅野さんが亡くなったときに作られていた曲で、「亀ちゃん、僕この曲は入れたいんだよね」とおっしゃって。他にもはじめに届けられた曲が何曲かあるんですけど、ここ数年でミッキーさんと一緒に音楽を作ってきた、たくさんの仲間が亡くなってしまったんですね。レクイエムとまではいかなくてもちゃんと気持ちを伝えて、ミッキー吉野は今、地に足をつけて音楽をやっているけど、やがては天国に行くときが来る。ミッキーさんすごく元気なんですよ(笑)。音楽で様々なフィーチャリングアーティストがミッキーさんを愛しているんだったら、ミッキーさんからもミッキーさんが愛したミュージシャンたちにちゃんと音楽のメッセージを残しましょうとお伝えして、この曲を収録させていただきました。

田家:リリー・フランキーさんにもそういうお話をされたんですか?

亀田:そうですね。最初から英語詞があったんです。リリー・フランキーさんを選んだのも、喪失感。『東京タワー』のときもそうですけど、人を失う悲しみを穏やかに分かってらっしゃる方だなと思ったからです。

田家:岡村さんはミッキーさんが指名されたんですか?

亀田:ミッキーさんが、NHK『SONGS』で岡村靖幸さんを観ていて、素晴らしい歌声で、悲しみを知っている歌だというふうに思ったんですって。「NEVER GONE」、自分の仲間たちに贈る歌を歌うときに岡村さんにぜひ歌ってほしいということでした。僕は岡村さんとフェスで一緒に演奏したり、曲作りを一緒にやったことがあったので、じゃあやりましょうとなって、岡村さんにもこれは喪失感の歌だとか、いろいろお話しさせていただきました。岡村さんのボーカルでしかありえない表現力ですよね。2020年にザ・ゴールデン・カップスのマモル・マヌーさんが亡くなって、翌年にはミッキーさんと一緒にゴダイゴをプロデュースしていたジョニー野村さんや村上“ポンタ”秀一さんが亡くなって。そんな中で、一緒に音楽を作った仲間と演奏してもらいたいなという気持ちが僕の中で強くなっていったんです。1970年代にミッキーさんを囲んでいたような仲間と一緒に「NEVER GONE」のサウンドを作り上げたら、浅野さん、マモルさん、ジョニーさん、ポンタさんにもいっぱい届くんじゃないかなと思って。ベースは僕も弾きたかったんですけど、高水健司さんにウッドベースを弾いてもらって。ポンタさんがいないのでどうしようと思ったときに、フィーリング的に山木さんに頼んで。で、小倉さんにガットギターを弾いてもらい、金原さんは岡村さんの方の文脈で常に一緒にやっていた時代があったのでということで、本当にミュージシャン同窓会を生の演奏で達成できたんです。

田家:天国にいる方たちに聴いてほしい気持ちが込められている1曲になった。亀田さんはご自分の70歳は想像されていたりするんですか?

亀田:70歳って13年後ですから、13年前の自分のことを考えるとあっという間に来るんじゃないですかね。僕は今回作品を作ることによって、決めたことがあるんです。自分の終わりを設定しない。ミッキーさんの音楽への情熱、「最後のアルバムになるかもしれないけど亀ちゃん手伝って。全力でやるから。」と前に進んでいく音楽家の先輩の姿を見た。コロナ禍とかいろいろ続くと、どこかでラインを引くほうが楽なんじゃないのかなと思ったこともあるので。あとは本当に様々な音楽が生まれてきていて、レジェンドな方と制作する一方、若手アーティストとも音楽を作れるチャンスが僕にはある。ミッキーさんのアルバムを作ることによって、自分の行く道がすごくクリアになった気がします。

田家:それを教えてくれたアルバムになった。この何年間でいろいろな方たちが亡くなったりされて、そういう人たちへの想いを1つの曲に込めている。アルバムはこういう新曲で締めくくられました。すごいアルバムになりましたね。亀田さんとはここでお別れです。先週と今週ありがとうございました。

亀田:ありがとうございました!


アルバム『Keep On Kickin’ It』ジャケット写真

Rolling Stone Japan 編集部

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