ホイットニーにとって7枚目となる今回のアルバムでは、彼女お得意の壮麗かつドラマティックな瞬間が訪れるまでに、なんと25分もかかる。7曲目の収録曲「夢をとりもどすまで」で、彼女は逆境で勝利することを歌い、オーケストラとゴスペル風ピアノが曲を盛り上げる。この曲では、かつてのホイットニー節が健在だ。そう、「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール」(1985年)のようなメガヒットを送り出した、力強いバラードの名手がここにはいる。とはいえ、今年は2009年。ビヨンセ世代のリスナーは、ここ何年も離婚問題が取りざたされている、タブロイド紙の常連としてホイットニーを記憶している。だが興味深いことに、スポットライト浴びまくりの華麗な瞬間は、この曲ぐらいなのである。『アイ・ルック・トゥ・ユー』で、彼女は過去をほとんど振り返っていない。これはモダン・ソウルのアルバムで、ノスタルジーやカタルシスよりも、明快さやストレートさを追い求めた、スタイリッシュで元気の良いラヴ・ソング集なのである。

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