ツタロックフェス2022クイックレポ:MY FIRST STORY、ビッグアンセムが持つ力

MY FIRST STORY(Photo by Taichi Nishimaki)

本日3月20日、幕張メッセ国際展示場9・10・11ホールで開催中のツタロックフェス2022。MY FIRST STORYのクイックレポートをお届け。

【写真を見る】MY FIRST STORYのステージ(記事未掲載カットあり)

12時前、つまりMY FIRST STORYの出番前、整然と並べられた椅子で埋め尽くされたフロアにどよめきと拍手が起こった。リハ代わりに曲をやる、なんていうのはフェスではよく見かける光景。しかし、マイファスはそんなもんではなく、ここで他人の曲をやったのである。そりゃあどよめくよね。だって、Hiro(Vo)のボーカルでマカロニえんぴつ「なんでもないよ、」だよ? サービス精神もあっただろうが、ある種の余裕がこの時点で感じられた。

さて、本編。真っ赤な照明が激しく明滅し、強烈な重低音が轟くなかバンドは持ち場につき、Kid’z(Dr)とNob(Ba)がひねり出す重厚なビートとともにHiroが歌い始めたのは「アンダーグラウンド」。アッパーでわかりやすい楽曲というわけではないが、Teruが豪快に鳴らすスタジアムロック的なギターリフも含め、初見ですら徐々にグルーヴの渦に巻き込む力がある。

左右の巨大スクリーンにリアルタイムで歌詞が浮かんでは消えていった「I’m a mess」では、Hiroが歌い上げる美しいメロディラインと唸りを上げるベースがラウドなハーモニーを奏でた。続く、「Dreaming of you」や「大迷惑」もそうだが、モッシュやダイブに駆り立てるというより、MY FIRST STORYというバンドの楽曲のよさをじっくり堪能させる流れがうれしい。

グッとギアが上がったのは、「フェスの主催の人から頼まれました! 『精一杯全力で盛り上げてほしい』と! だから、席はあるけどさ、一緒に踊ろうよ!」というHiroの呼びかけとともに始まった「モノクロエフェクター」だ。演奏に込められ熱量の高まりはフロアにも伝播していき、Hiroは「誰でもいい! 誰でもいい! 一緒に踊ってくれ!」とさらに煽り倒す。

それにしても、めちゃくちゃ速い曲をやっているわけでもないのになんでこんなに体が熱くなるんだろう。ちょっと考えて自分の体が出した答えはリズム隊の強靭さだ。Kid’zとNobによるグルーヴがとにかく重い。彼らが描き出す大きなグルーヴが体内をゆっくりとえぐって熱を生んでいくのである。幕張メッセのような大会場だからなおさらだ。

少なくとも今日に関して言えば、中盤の馬鹿デカいグルーヴが演奏面における聴きどころだったとは思うのだが、それだけで評価できないのが爆音で鳴らすロックの、ロックバンドの面白さである。ラストの「不可逆リプレイス」の中盤、Hiroは昨今の世界情勢を受けて、以下のような趣旨のことを話した。

“音楽で世界を変えるなんて綺麗事なんだと思いました。でも、それを信じて誰よりも大きな声で叫び続けるのがロックバンドの役目なんだと思う。音楽の可能性を信じて今日ここまで来てくれたお前たちに感謝してます。ありがとうな!”

こういう力強いメッセージを乗せられるのが「不可逆リプレイス」というビッグアンセムが持つ力であり、Hiroというフロントマンの力なんだろう。今日は全体的に若い観客の姿が目立つが、ここでガツンとやられた人は多いはずだ。今日も最後まで楽しみましょう。


Photo by Taichi Nishimaki

SET LIST

M1. アンダーグラウンド
M2. I’m a mess
M3. Dreaming of you
M4. 大迷惑
M5. モノクロエフェクター
M6. PARADOX
M7. MONSTER
M8. 猿真似ドロップアウト
M9. 不可逆リプレイス

※「ツタロックフェス2022」クイックレポート一覧はこちら

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE