ツタロックフェス2022:Tempalayの本質が詰まったグルーヴとユーモア

Tempalay・小原綾斗(Photo by Masanori Fujikawa)

本日3月20日、幕張メッセ国際展示場9・10・11ホールで開催中のツタロックフェス2022。Tempalayのクイックレポートをお届け。

【写真を見る】Tempalayのステージ(記事未掲載カットあり)

15時、おやつの時間に登場したのはTempalay。「Rolling Stone Japan」が初めてW表紙仕様で発売したvol.14(2021年3月発売)にてBACK COVERを飾ってくれた彼ら。そのときのインタビューでも語ってくれたが、Tempalayのメインソングライターである小原綾斗(Vo,Gt)は、人の心の動かすメロディやサウンドを紡ぐために自分の記憶に潜り込み、自分の感性の奥底に横たわっている心象風景ととことん向き合っている表現者である。そんな彼が歌うメロディ、Tempalayの3人が鳴らす音には、リスナーそれぞれが過ごした「おやつの時間」を思い返させるようなノスタルジックさも孕んでいる。それぞれがこれまでの人生で祈ったこと、泣いた瞬間、怒りを覚えたことなどを蘇らせてくるのだ。

1曲目「脱衣麻雀」からJohn Natsuki(Dr)が叩くパッドのビートがずしんと会場に響き、サイケデリックで摩訶不思議なTempalayの世界へと一気に誘い込む。途中で、小原が左手でお札を数えるような仕草を見せた瞬間がステージ隣のスクリーンに映る。音も、言葉も、パフォーマンスも、ファッションも、隅々にまでユーモアを散りばめるTempalayらしい。

「脱衣麻雀」から「SONIC WAVE」へと繋げて、ハードロック的なギターリフにジャジーなベースとハイハットの刻みも混ぜてみたりと、音の中で遊びまくる。AAAMYYY(Cho, Syn)が手をあげるとオーディエンスも手をあげて、それを目にしたAAAMYYYが笑顔になる瞬間を見事カメラがキャッチし大きなスクリーンに映し出される。Tempalayといえば、その独特なメロディやオリエンタリズムが溢れる上モノの音でオリジナリティを語られることも多いが、この日大きなスピーカーから流れる爆音からは、ドラムと高木祥太(BREIMEN)が弾くベースの気持ちよさに陶酔する瞬間も多かった。






Photo by Masanori Fujikawa

直近で行われたTempalayのワンマンライブ「寿司」では、PERIMETRONが演出を手掛け、鏡面を配したステージで幻想的なライブを繰り広げた。今日の舞台は、非常にアーティスティックな照明演出が施されていたものの、「寿司」に比べると至ってシンプルなステージで、4人の肉体的なグルーヴがよりストレートに伝わってくるものであり、音だけで様々な景色を描くことのできるバンドであると改めて感じられるものだった。「のめりこめ、震えろ。」では炎が燃えるような激しい場所から天国のような白い光にまとわれた清らかな世界へとサウンドスケープを移していき、「どうしよう」ではしゅわしゅわと泡が発生している水の中を、音でペイントする。

この日、小原いわく「喉の調子が悪い」とのことで、最後の曲「そなちね」では何度か言葉を詰まらす場面も。この曲はJohn Natsukiの子どもが生まれるときに書かれたものであるが、そんな小原の今日の歌い方が、親が子どもに想うどんな言葉にもならないような、親が命がけになってでも、子が美しい光のように生きていくことを切実に願う気持ちが表現されているかのようだった。

Tempalayは現在、一昨日から放送がスタートした、佐藤勝利(Sexy Zone)主演『WOWOWオリジナルドラマ 青野くんに触りたいから死にたい』の音楽を担当している。新曲が話題沸騰中のタイミングにフェスに出演すると大抵の場合はプロモーションの目的も含めて新曲を演奏したがるものだが、そうはしないのがTempalay。時代の流れや世の中の話題、マーケティングなどに惑わされず、表現者としての信念や自分たちがその日に表現したいものを何よりも大事にする彼ららしいと思わされた。


SET LIST

M1. 脱衣麻雀
M2. SONIC WAVE
M3. のめりこめ、震えろ。
M4. どうしよう
M5. 大東京万博
M6. EDEN
M7. GHOST WORLD
M8. そなちね

※「ツタロックフェス2022」クイックレポート一覧はこちら

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