ツタロックフェス2022:sumikaとオーディエンスによる魂の交換

sumika(Photo by Masanori Fujikawa)

本日3月20日、幕張メッセ国際展示場9・10・11ホールで開催中のツタロックフェス2022。sumikaのクイックレポートをお届け。

【写真を見る】sumikaのステージ(記事未掲載カットあり)

サウンドチェックをするメンバーの「よーろしくお願いしまーす!」という声に拍手が送られる。そして、「sumika、本気のリハーサルが始めますよ―!」という片岡健太(Vo, Gt)の呼びかけとともに景気よく「カルチャーショッカー」を1コーラス分鳴らす。そして、ものすごい人の数を見て「ナウシカの最後みたいだね」と笑わす。いや、たしかに奥までびっしり人だらけ。続いて、「Lovers」を“本気のリハーサル2曲目”として披露して、「ひとりで来てる方もあと5分経ったら寂しい思いはさせないので」といったん袖に帰るのだけど、これ、もう十分に本編です。

きっちり5分後に本編のSEが鳴りだすのを合図に、飛び跳ねる女子、手を挙げるカップルの姿が。どれだけ彼らの音楽が待たれていたのかよくわかる。そして、片岡がギターをかき鳴らしながら歌いはじめたのは「ファンファーレ」だった。幾重にも重なる丁寧なコーラスワークとともに届けられる求心力のあるメロディに何千もの拳が突き上げられる。

続く「絶叫セレナーデ」では、「でかい音聴かせて! 飛ばしていくよ!」と片岡はハンドマイクでステージを動き回り、フロアを煽る。サビでシンガロングすることはできなかったものの、一体感は十分。観客と演者の魂の交換がまるでワンマンライブのような雰囲気を熟成していく。そして、一変の曇りもないポップチューン「フィクション」で最初のピークを迎えた。

告白すると、自分は彼らのライブを観るのはこれが初めてだ。ここまでの流れはわりと事前のイメージ通りだったのだけど、このあとから自分の認識の甘さをどんどん恥じるようになる。

sumikaは爽やかなバンドというイメージだったけど、実は泥臭さもある。ジャジーにスウィングする「Strawberry Fields」では飛び散る汗が見えるかのような演奏を繰り広げ、かと思えば、同期をメインに据えた大胆なアプローチの「Babel」でビート感たっぷりに攻めてくる。で、その直後に放り込んでくるのが鍵盤モリモリの直球バラード「願い」である。この日は総勢7名でステージに上がった彼らだが、自由自在に編成を変え、次に何が出てくるのか予想がつかないパフォーマンスを40分という決して長くはない時間を濃密なものにしていった。

「グライダースライダー」をプレイする前、片岡は「今日が最後のライブになっても後悔しないぐらい命をかけてライブをします」と言っていた。イメージに合わない熱さだなと思っていたけど、自分は彼らの音楽家としての矜持をしっかり理解できていなかったのである。反省したのちに思った、すごくいいバンド! てか、おもしれえバンド!

こういう出会いがあるからフェスは面白い、と思った。こんな当たり前なこと、コロナ禍以前は恥ずかしくて言えなかった。だけど、今はそう思えることがうれしい。フェスが帰ってきているんだなあ。「Shake & Shake」で幕張が今日イチの多幸感に包まれるなか、自分の心もあらゆる意味で弾んだ。

SET LIST

SE ピカソからの宅急便
M1. ファンファーレ
M2. 絶叫セレナーデ
M3. フィクション
M4. グライダースライダー
M5. Strawberry Fields
M6. Babel
M7. 願い
M8. Shake & Shake

※「ツタロックフェス2022」クイックレポート一覧はこちら

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