チャーリーXCXが語る、2022年の「セルアウト」の形

チャーリーXCX(Photo by Emily Lipson)

パンデミックがもたらした苦難の時期を乗り越えたポップスターは、キャリア史上屈指の名曲を収めたアルバム『CRASH』で再びシーンに戻ってきた。

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チャーリーXCXはポップ界で最もエキセントリックな作家でありパフォーマーの1人だが、彼女はいよいよ本気で「ポップ界の主役」になるつもりだ。リリースされたばかりの新作『CRASH』は、非常にユニークなコンセプトを掲げている。キャッチーなフックに満ちた非の打ち所のないポップアルバムであると同時に、同作は過去数十年間のポップの歴史を駆け足で辿ろうとする。楽しくあるべきという彼女のモットーは、『CRASH』においても大前提となっている。「私っていう人間と私の作品を知ってる人の多くは、私がいつも半分本気で、残り半分はただのおふざけだってことを分かってる」。イングランドの田舎町に滞在しながら、電話取材に応じてくれた彼女はそう話す

『CRASH』はロックダウン下でタイトな締め切りに追われながら完成させた2020年作『How I’m Feeling Now』以来初のアルバムとなる。彼女のドキュメンタリー映画『Alone Together』は、同作の制作プロセスの記録だった。音源と同じように、同ドキュメンタリーは極めてパーソナルな内容となっており、パンデミックと自身で定めた期限内にアルバムを完成させるという目標がもたらした葛藤、そして彼女のプライベートな一面が克明に描かれている。「理解してもらえないこともある」と、彼女は自身の作品について話す。「作品に対する評判が芳しくないってこと。でも、それが私のやりたいことだから」

ー先日、あのドキュメンタリー映画を観たのですが。

観たんだ……。

ーなぜそんな反応なのですか?

前世の記録みたいに感じるから。正直、観てるとつらくなる。それに、残念ながら当時のカレとはもう別れたし。ものすごく感情的になってしまうから、私はもう2度とあれを観ないと思う。

ーあの作品はあなたの2020年の縮図だったと思うのですが、2021年はどんな年でしたか?

『CRASH』の制作は『How I’m Feeling Now』よりも前から始めていたんだけど、パンデミックで世界の状況が一変して方向転換することにしたの。14歳の時に実家のベッドルームで音楽を作り始めた頃のような、ものすごくローファイな方法で何か(『How I’m Feeling Now』)を作り、レンタルしたグリーンバックを使って自宅の地下室でミュージックビデオを撮影した後だっただけに、メキシコシティでHannah Lux Davisと一緒にビデオを撮るっていうのがすごく新鮮だった。プロジェクトの内容が毎回ガラッと変わるっていうのは、私にとってはいつものことなんだけど。

ー『CRASH』には、悪魔と契約を交わしたポップスターという明確なコンセプトと背景があります。それはアルバムの制作を始めた時から決めていたのでしょうか?

現代のポップミュージックの世界における「セルアウト」っていう概念に、そんなものが存在すればだけど、前から興味があったの。私は16歳の時からずっとメジャーレーベルにいるけど、そういう立場のアーティストとしてはかなり珍しい道を歩んできたし、独特な存在だと思う。このアルバムとそのビジュアル面には、それがはっきり表れてると思う。本物っていう概念に対する私の考え方もね。アーティストってみんな、自分で曲を書けること、自分でミュージックビデオを作れること、何もかも自分でコントロールしていること、そういうのを証明しなきゃいけないって感じてると思う。でも私は歳を取るにつれて、そういうのがどうでも良くなってきた。自分が優れたポップソングを書き、ビジョンを形にして伝えられるということを、私は誰よりもよく分かってるから。





Translated by Masaaki Yoshida

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